細井計『南部と南部道中』

第I部「南部を歩く」が非常に詳しく有益。しかし第II部、第III部の細井先生執筆部は山川『岩手県の歴史』とほとんど一字一句同じで、いただけ ない。たしかに岩手県の中心は盛岡領であって、その叙述が県の概説と重なってしまうのはいたしかたないかもしれないが……。それだけにこのシリーズは、二 つ以上の県にまたがる領域や、ある県の「辺境」にあたる部分が面白い。

ところで以前岩手県立博物館を訪れたときにも思ったが、及川古志郎、野村胡堂、金田一京助、田子一民が盛岡中学の同級で文学志向をもっていて、その すぐ下には石川啄木がいるというのは実に凝縮されていておもしろい。ちなみに私たち東洋史を学ぶものの学祖ともいえる那珂通世もやはり南部の出身で(とい うより前巻『下北・渡島と津軽海峡』で詳しく語られている那珂梧楼の養子)である。

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