湯川ゼミ学生のための基礎技術 ――イスラーム史研究入門基礎 Ver.1.0.1

はじめに

本稿はこれから湯川ゼミで、東洋史、それも西の方を勉強・研究してみるか、という人のために、次のようなことを説明します。

ネタ(テーマ)の見つけ方ネタ(テーマ)の深め方(関連文献の探し方)関連文献の手に入れ方参考文献リストの作り方などです。つまり、網羅的なデータ(さまざまな概説書や文献目録・辞典類のリスト)と非常に細かいテクニカルなこと(文献リストの書法など)を扱います。「どのように考えたらよいか」「どのように書けばよいか」「どのように発表・討論すればよいか」は、私には荷が勝ちすぎています。そのようなことを知りたければ、分野は違いますが野村一夫さんによるSocius社会学の作法・初級編をご覧ください。授業の受け方やレジュメの作り方まで、その思想的背景とともに説明されています。

さて、当然のことながら、本稿は湯川ゼミ向けに調整されていますので、注意してください。つまり、ここに書かれていることがuniversal(普遍的)ではない、ということです。学生が書いたものだということも忘れないでください。この件で湯川先生に苦情を出したりしないでください。私に苦情を下さい。喜んで受け取り反映させます。というわけで、図書館情報学もイスラームもさわりしか知らない私に、専門的見地からのアドヴァイスを大歓迎します。また、この文書のユーザーの方もご忌憚ないご意見をお寄せください。

本文書はWebでの閲覧において、もっとも便利になるように記述されています。プリントアウトした上での利用もある程度想定してはいますが、もしいま、プリントアウトしたものをご覧なら、http://www.mita.keio.ac.jp/islam_history_tech_basic.htmlにあるリソースをご覧ください。たとえばプリンタアウトしたものには、紹介した書籍のあとにはISBNコードというものを示していますが、Web上ではISBNのかわりにOPACの当該書籍のデータへのリンクとなっており、直接現在の状況を確認することが出来ます。

目次

第一章 ネタを見つける

関心のあるテーマを見つけなければ、物事が始まりません。この章ではテーマを見つけるための方法について述べます。あわせて図書館の使用方法についても少しは学べるでしょう。

図書館をうろつく

イスラーム史に限らず、なにか調べたいと思ったら、図書館は非常に有用な場所です。そしてまた、何かに興味を見いだすにも有用な場所です。図書館には、知識が山のように積まれています。そんな場所をふらふらし、気になった本を手にするというだけでも、だいぶ世界は広がります。

当然のように思っているかもしれませんが、慶應義塾図書館の最大の魅力は、ほぼ全館開架である、ということです。一般の大学図書館は、ある程度の本だけを開架にしておいて、それ以外の本は書庫にしまってあります。それらの本を見たければ、請求番号を調べて、図書館の人にお願いして取ってきてもらわなければならないのです。慶應義塾図書館では、我々は書架をながめて、興味次第で本を手にとってパラパラとめくることができます。この強み、生かさない法はありません。

しかし、慶應義塾図書館は広大です。以前、私が新館の全ての書架の間を歩いたときには、本を手にとって眺めた時間もあわせて、約7時間かかりました。そんな場所に何の案内もなく足を踏み入れると迷子になること必至です(旧館は案内があっても迷子になります)。その一方で、イスラームの本はこのあたり、と目星がついてしまうと、それ以外の場所にいかなくなる傾向があるようです。とりあえずここでは、まず慶應義塾図書館での配架の方法(つまり、どこにどのような本があるかということ)について説明します。しかし、実際に歩いた方が理解は圧倒的に早いはずです。「Appendix.5 慶應義塾図書館の歩き方――探検のために」と併せて参照してください。

配架分類

慶應義塾図書館の蔵書は、非常に大雑把にいうと次の五種類に分類され、配架されています。

  1. 一般図書(和書)
  2. 一般図書(洋書)
  3. 雑誌
  4. 学部・研究科図書
  5. リファレンス

本は普通の本が一般図書、専門性の高いものが学部・研究科図書となります。請求番号は、この分類に従って付与されています。一般図書(和書)はA、一般図書(洋書)はB、学部・研究科図書は、たとえば東洋史ならOHとなります。リファレンスはRが付され禁帯出となります。

配架場所

具体的な配架場所は例外(例えば日本の地方史)を除いて次の通りです。

  • 一般図書(和書):地下一階から地下二階
  • 一般図書(洋書):地下二階から地下三階
  • 学部・研究科図書:地下三階および旧図書館
  • 和雑誌-大学紀要(慶應義塾をのぞく):二階
  • 和雑誌-一般雑誌:三階
  • 洋雑誌:四階
  • レファレンス:一般的なものは一階(歴史と概ねの社会科学)と地下一階(総記~哲学、社会学~文学)、年鑑などは四階

なお、古い一般図書は白楽に移されます。三田にある古い一般図書と雑誌は地下四階にあることがあります。

内部配架

一般図書

一般図書は、和書、洋書とも後述する日本十進分類法によって配架されます。具体的には、和書では地下一階に1類「哲学」から3類「社会科学」まで、地下二階に4類「自然科学」から9類「文学」までが収められています。洋書はほとんどのものが地下二階に、独文仏文その他の文学は地下三階に収められています。

学部・研究科図書

学部・研究科図書は、新館地下三階と旧図書館に配架されます。文学部図書は、中文以外はすべて新館地下三階にあります。ただし近現代を扱う場合は、旧図書館のPL法学部政治学科図書を利用することがあるかもしれません。配列は、ある独特のルールに従っています。これらの図書は、PDA/PDBの教育学図書以外では、十進分類法は適用されません(あくまで配架に際してです。OPACにはきちんと入力されています)。

雑誌

雑誌の場合は、配架場所の項で述べたとおりです。配列順はアルファベット順となります(たとえば『イスラム世界』ならiの項にあります)。大学紀要は発行大学のアルファベット順の配列です(たとえば『史学雑誌』は東京大学の発行ですからtになります)。

歩こう

では、説明はこれくらいにして歩いてみましょう。ここまで書いてきたことは、頭で理解するより歩いて目で見たほうが、よくわかるはずです。さらに一度でも日本十進分類法の順を追って歩いていたことがあるかないかで、「道具」としての図書館の使い勝手はかなり違うはずです。これについては、「Appendix.5 慶應義塾図書館の歩き方――探検のために」として、具体的にまとめましたのでご覧ください。

概説書をあさる

概説書を読んでみるのは、興味への第一歩です。幸いなことに、イスラーム史の先生は文章のうまい方が多いし、ここ数年で世界史シリーズのイスラーム史の部分もずいぶんと整備されてきました。とりあえず以下のようなものがあります。意外と一つや二つは聞いたことがないんじゃないでしょうか。

ただし一般的な概説書全てに視野を広げると膨大な量になりますので、ここでは、一般向けの世界の歴史シリーズの類を紹介します。紹介する書籍は読みやすいものですし、図版が多いので楽しいはずです。ついでに全巻読むと、もっと楽しいかもしれません。一方で註がきちんと付いていたり、参考文献リストが完全に示されているわけではありません。本の内容について、わずかでも説明が欲しければ東京大学情報基盤センターの「ブックコンテンツ・データベース」を利用するとよいでしょう。

概説書の類を多く知りたければイスラーム地域研究総括班の「現代イスラーム世界を知るための基本的な日本語文献リスト」(現代となっていますが歴史も扱っています)や、「あらたな地平線をめざして」、「東外大図書館(イスラム関係資料所蔵目録)」などをご利用ください。また英語が入ってもいいという人は、同じく東京外大の「中東・イスラーム関係文献」が役に立つでしょう。

中央公論(新)社「世界の歴史」新版,1996-2000.
  • 8.佐藤次高『イスラーム世界の興隆』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4124034083
  • 15.永田雄三,羽田正『成熟のイスラーム社会』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4124034156
  • 20.山内昌之『近代イスラームの挑戦』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4124034202
  • 9.杉山正明, 北川誠一『大モンゴルの時代』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4124034091
  • 13.石澤良昭, 生田滋『東南アジアの伝統と発展』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 412403413X
  • 14.佐藤正哲, 中里成章, 水島司『ムガル帝国から英領インドへ』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4124034148
核となる中東イスラーム史は、8,15,20の三巻からなります。図版の量、新しさ、読みやすさなどを総合的に勘案すると、まず読んでおくべき概説でしょう。

 

講談社「新書 イスラームの世界史」1993.
  • 1.佐藤次高,鈴木董編『都市の文明イスラーム』,1993.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4061491628
  • 2.鈴木董編『パクス・イスラミカの世紀』,1993.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4061491660
  • 3.坂本勉,鈴木董編『イスラーム復興はなるか?』,1993.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 406149175X
三巻からなる初めてのイスラーム世界の通史。現代新書に収められています。コンパクトですが、ポイントごとに専門家が執筆しているので、非常に充実しています。各巻末に「もっと勉強したい人のためのブックガイド」が所収。

 

山川出版社「世界各国史」新版,1998-.
  • 8.佐藤次高編『西アジア史Ⅰ アラブ』,2002.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634413809
  • 9.永田雄三編『西アジア史Ⅱ トルコ・イラン』,2002.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634413906
  • 4.小松久男編『中央ユーラシア史』,2000.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 463441340X
  • 6.池端雪浦編『東南アジア史Ⅱ 島嶼部』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634413604
  • 7.辛島昇編『南アジア史』,未刊.
  • 16.立石博高編『スペイン・ポルトガル史』,2000.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634414600
こちらも時代・地域ごとに専門家が執筆。考古学年代から説き起こしています。特に近現代の比重が重いようです。ブックガイドはかなり詳細なので是非参照すべきでしょう。

 

山川出版社「世界史リブレット」1996-2000.
  • 11.梅村坦『内陸アジア史の展開』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634341107
  • 15.東長靖『イスラームのとらえ方』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634341506
  • 16.三浦徹『イスラームの都市世界』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634341603
  • 17.佐藤次高『イスラームの生活と技術』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634341700
  • 18.杉田英明『浴場から見たイスラーム文化』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634341808
  • 19.林佳世子『オスマン帝国の時代』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634341905
  • 37.加藤博『イスラーム世界の危機と改革』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634343703
  • 52.臼杵陽『中東和平への道』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 463434520X
  • 53.田村愛理『世界史のなかのマイノリティ』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 463434530
高校生向けのテーマごとの小冊子です。やさしく書いてありますが、新しい論点が詰め込んであるので非常に楽しいシリーズです。また各テーマについて理解を固めるのに有用です。

 

同朋社 「アジアの歴史と文化」1994-2000.
  • 8.間野英二編『中央アジア史』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4810408612
  • 9.間野英二編『西アジア史』,2000.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4810408620
コンパクトにまとまった通史。割付が洒落ていますが、そのせいで文章量が減っているという話もあります。各所のコラムがためになります。編者を見ればわかりますが、中央アジアが強く、西アジアもイランが詳しくなっています。

 

世界思想社「イスラームを学ぶ人のために」1993.
  • 山内昌之,大塚和夫編『イスラームを学ぶ人のために』,1993.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4790704769
時代的展開、地域的展開、主題的展開の基礎をそれぞれわかりやすく、かつ必要最低限度に論じています。巻末に文献目録があります。

 

朝日新聞社「地域からの世界史」1992-94.
  • 4.桜井由躬雄,石沢良昭,桐山昇『東南アジア』,1993.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4022584998
  • 5.辛島昇『南アジア』,1992.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4022585005
  • 6.間野英二,中見立夫,堀直,小松久男『内陸アジア』,1992.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4022585013
  • 7.屋形禎亮,佐藤次高『西アジア 上』,1993.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4022585021
  • 8.永田雄三,加藤博『西アジア 下』,1993.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 402258503X
  • 10.松本宣郎,牟田口義郎『地中海』,1992.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4022585056
全然売れなかったということですが、コンパクトな冊子に広いスパンの通史が展開されています。特に内陸アジアや地中海など、これまで通史の書かれなかった「地域」に焦点をあてています。

 

講談社「ヴィジュアル版 世界の歴史」1983-85.
  • 6.本田實信『イスラム世界』,1985.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4061885065
ペルシア語史料を使ったモンゴル帝国史研究を開いた本田實信さんは、イラン史の専門家でもあります。ヴィジュアル版の名の通り、写真・図版が多く楽しめます。やはりイラン寄りという感は否めませんが、アラムート砦のドキュメントは圧巻です。

 

三省堂「人間の世界歴史」,1981.
  • 9.矢島文夫『アラブ民族とイスラム文化』,1981.[三田所蔵]
人びとの生き方としての「文化」に重点をおいた通史。アッバース朝下のバグダードにもっとも重点を置いています。

 

講談社「世界の歴史」,1976-83.
  • 10.前嶋信次『イスラムの時代』,1977;rep.2002(文庫)[KOSMOS-OPAC:2002]ISBN: 4061595369
  • 22.護雅夫,牟田口義郎『アラブの覚醒』,1978.[三田所蔵]
古いというほどには古くなく、新しいというほどには新しくないという微妙な位置にある通史。10巻はジャーヒリーヤのアラビアからサファヴィー朝のエスファハーンまでをカバーします。前嶋さんの河出版「世界の歴史」での記述と比べてみるのもよいでしょう。

 

河出書房「生活の世界歴史」,1975-76.
  • 7.前嶋信次『イスラムの蔭に』,1975;rep.1980;rep.1991(文庫).[三田所蔵:1980]
10世紀のバグダードとコルドバに注目し、人びとの生き方を活写します。この時代を詳しく扱った概説はほかにはありませんし、史料の引用も多いので、貴重です。私は概説書の類では、この本の文章が一番気に入っています。巻末に史料についての言及があります。他の巻も堀米庸三ら文章に香りのある人たちが書いています。

 

誠文堂新光社「世界歴史体系」1969.
  • 9.『イスラーム』,1969.[三田所蔵]
でかい本。写真を含め非常に図版の多い本です。また、預言者の時代から近代までをバランスよく専門家が記述しています。

 

世界文化社「世界歴史シリーズ」1968.
  • 8.嶋田襄平編『イスラム世界』,1968.[三田所蔵]
ばかでかい本です。ゆえに非常に写真が多く楽しめます。この時代としては珍しく一部カラーです。見たことのない図版もあるかもしれません。

 

河出書房「世界の歴史」1968.
  • 8.前嶋信次『イスラム世界』,1968.[三田所蔵]
若干古くなっているきらいはありますが、サーサーン朝からコンスタンティノープル・グラナダの陥落までを扱う通史です。

 

中央公論社「世界の歴史」旧版,1961.
  • 5.岩村忍編『西域とイスラム』,1961;rep.1983.[三田所蔵]
あえて挙げておいてなんですが、あまりに古いので読まない方がいいです。シルクロードが中心で、イスラーム世界の扱いはきわめて弱く、「オスマン=トルコ人の暴虐」とか結構いかがなものかという記述が散見されます。

 

山川出版社「世界各国史」旧版,1955-1987.
  • 11.前嶋信次編『西アジア史』,1955;2nd ed.,1972[KOSMOS-OPAC:1972][日吉所蔵:1955]
  • 16.江上波男編『中央アジア史』,1987[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634411601
世界各国史の旧版です。三十年間強に渡って刊行されたあげくに、十年後には新版が出ています。『中央アジア史』と新版の『中央ユーラシア史』では注目する場所が全然違っているのがわかるでしょう。といっても、これらの本は、内容がそれほどひどく古くなっているわけではありませんし、味わいのある文章を読むことが出来ます。

 

論集をあさる

これまた最近、ずいぶんと出回ってきました。主な論集は次の通り。基本的に収められているのは論文ですから、参考文献リストがきちんとしています。

岩波書店「講座 世界歴史」新版,1997-2000.[各巻所収論文一覧]
  • 1. 『世界史へのアプローチ』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108212
  • 5. 『帝国と支配――古代の遺産』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108255
  • 6. 『南アジア世界・東南アジア世界の形成と展開――-15世紀』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108263
  • 7. 『ヨーロッパの誕生』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108271
  • 8. 『ヨーロッパの成長』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 400010828X
  • 10. 『イスラーム世界の発展――7-16世紀』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108301
  • 11. 『中央ユーラシアの統合――9-16世紀』,1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 400010831X
  • 12. 『遭遇と発見――異文化への視野』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108328
  • 13. 『東アジア・東南アジア伝統社会の形成――16-18世紀』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108336
  • 14. 『イスラーム・環インド洋世界――16-18世紀』,2000[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108344
  • 15. 『商人と市場――ネットワークの中の国家』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108352
  • 16. 『主権国家と啓蒙』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108360
  • 18. 『工業化と国民形成』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108387
  • 19. 『移動と移民――地域を結ぶダイナミズム』,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108395
  • 20. 『アジアの<近代>』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108409
  • 21. 『イスラーム世界とアフリカ――18世紀末-20世紀初』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108417
  • 22. 『産業と革新』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108425
  • 23. 『アジアとヨーロッパ』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108433
  • 24. 『解放の光と影』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108441
  • 25. 『戦争と平和』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 400010845X
  • 26. 『経済成長と国際緊張』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108468
  • 27. 『ポスト冷戦から21世紀へ』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108476
  • 28. 『普遍と多元』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000108484
歴史学界の総力をあげて97年から2000年にかけて発行された世界史全体を扱う論集。時代別地域別に扱う巻とテーマ別に扱う巻にわかれています。テーマ別に扱う巻は、上に挙げた中では1,5,12,15,19,22,25,28の各巻で地域や時代を超えてテーマを扱います。各巻の論文は、総説的テーマを扱う「構造と展開」が一本、周縁部をあつかう「境域と局所」が三から四本、個々のテーマについての「論点と焦点」に分かれ、さらにテーマ巻では「交流と比較」数本が追加されます。イスラーム世界を中心的に扱う10,14,21は最低限読んでおいて損はないでしょう。

 

青木書店 歴史学研究会編「地中海世界史」1999,2000.[各巻所収論文一覧]
  • 3.『ネットワークの中の地中海』,1999[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4250990230
  • 4.『巡礼と民衆信仰』,1999[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4250990281
  • 5.『社会的結合と民衆運動』,1999[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4250990435
地中海学会の活動の成果を「地域としての地中海世界史」としてまとめた論集。東洋史と西洋史の壁をこえた執筆者の構成が特徴的です。

 

山川出版社「地域の世界史」1997-2000.[各巻所収論文一覧]
  • 1. 濱下武志, 辛島昇編『地域史とは何か』, 1997. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442108
  • 2. 辛島昇, 高山博編『地域のイメージ』, 1997. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442205
  • 3. 辛島昇, 高山博編『地域の成り立ち』, 2000. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442302
  • 4. 川田順造, 大貫良夫編『生態の地域史』, 2000. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 463444240X
  • 5. 松本宣郎, 山田勝芳編『移動の地域史』, 1998. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442507
  • 6. 佐藤次高, 福井憲彦編『ときの地域史』, 1999. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442604
  • 7. 松本宣郎, 山田勝芳編『信仰の地域史』, 1998. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442701
  • 8. 川田順造, 石毛直道編『生活の地域史』, 2000. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442809
  • 9. 佐藤次高, 岸本美緒編『市場の地域史』, 1999. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634442906
  • 10. 木村靖二, 上田信編『人と人の地域史』, 1997. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634443007
  • 11. 濱下武志, 川北稔編『支配の地域史』, 2000. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634443104
  • 12. 木村靖二, 長沢栄治編『地域への展望』, 2000. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634443201
「地域史」という観点からの論文をテーマ別に振り分けた論集。必要なときは各巻の必要な論文だけ読めばいいでしょうが、各巻通読すると地域のイメージが広がり絡まり合います。

 

東京大学出版会「中東イスラム世界」1995-1998
  • 1. 山内昌之『イスラムとロシア――その後のスルタンガリエフ』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250213
  • 2. 杉田英明『日本人の中東発見――逆遠近法のなかの比較文化史』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250221
  • 3. 大塚和夫『テクストのマフディズム――スーダンの「土着主義運動」とその展開』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 413025023X
  • 4. 高山博『神秘の中世王国――ヨーロッパ、ビザンツ、イスラム文化の十字路』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250248
  • 5. 高橋和夫『燃えあがる海――湾岸現代史』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250256
  • 6. 加藤博『文明としてのイスラム――多元的社会叙述の試み』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250264
  • 7. 小松久男『革命の中央アジア――あるジャディードの肖像』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250272
  • 8. 内藤正典『アッラーのヨーロッパ――移民とイスラム復興』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250280
  • 9. 八尾師誠『イラン近代の原像――英雄サッタール・ハーンの革命』,1998.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250299
各冊とも一冊で論文としての体を為すシリーズ。論集にいれるかどうか考えましたが、一応いれておきました。興味のあるテーマのものがあれば、参考文献の宝庫となります。

 

東京大学出版会「講座 世界史」1995,1996.[各巻所収論文一覧]
  • 1.『世界史とは何か――多元的世界の接触の転機』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250817第1部「多元的世界の接触」:清水宏祐「十字軍とモンゴル~イスラーム世界における世界史像の変化」、新谷英治「オスマン朝とヨーロッパ」、荒野泰典「東アジアの華夷秩序と通商関係」、辛島昇「仏教・ヒンドゥー教・イスラーム教」、宮治昭「トゥルファン」、林邦夫「トレード」、高山博「シチリア王国」、第2部「大航海時代」:清水透「コロンブスと近代」、菅谷成子「フィリピンとメキシコ」、加藤榮一「銀と日本の鎖国」、長島弘「海上の道~15c-17cのインド洋、南シナ海を中心に」、堀直「草原の道」、宮地正人「台湾」、田中一生「ドゥブローヴニク」
  • 2.『近代世界への道――変容と摩擦』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250825
  • 3.『民族と国家――自覚と抵抗』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250833
  • 4.『資本主義は人をどう変えてきたか』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250841
  • 5.『強者の論理――帝国主義の時代』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 413025085X
  • 6.『必死の代案――期待と危機の20年』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250868
  • 7.『「近代」を人はどう考えてきたか』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250876
  • 8.『戦争と民衆――第二次世界大戦』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250884
  • 9.『解放の夢――大戦後の世界』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250892
  • 10.『第三世界の挑戦――独立後の苦悩』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250906
  • 11.『岐路に立つ現代世界――混沌を恐れるな』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250914
  • 12.『わたくし達の時代』,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4130250922
いきなりモンゴルに始まり、第一巻でオスマン朝までカバーしてしまう近代に重点をおいた論集通史。各地域史の集成ではなく、ここまで「世界史」の共時性を感じることのできるシリーズはありません。試みに第一巻所収の論文を一覧してみました。個人的に、ぜひ一度通読して欲しいと思います。

 

栄光教育文化研究所「講座イスラーム世界」1994,95.[各巻所収論文一覧]
  • 1.片倉もとこ編『イスラーム教徒の社会と生活』,1994.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4946424849
  • 2.後藤明編『文明としてのイスラーム』,1994.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4946424873
  • 3.堀川徹編『世界に広がるイスラーム』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4946424881
  • 4.竹下正孝編『イスラームの思考回路』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 494642489X
  • 5.湯川武編『イスラーム国家の理念と現実』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4897110009
  • 別巻.三浦徹、東長靖、黒木英充編『イスラーム研究ハンドブック』,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4897110017
地域や時代ではなく「イスラーム」を軸としてまとめられた論集。思想から歴史、生活まで幅広い分野をおさえています。別巻はもはやなくてはならぬ一冊となりました。

 

岩波書店「世界史への問い」,1989-91.[各巻所収論文一覧]
  • 1. 後藤明編『歴史における自然』,1989.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040413
  • 2. 川北稔編『生活の技術生産の技術』,1990.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040421
  • 3. 濱下武志編『移動と交流』,1990.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 400004043X
  • 4. 二宮宏之編『社会的結合』,1989.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040448
  • 6. 柴田三千雄編『民衆文化』,1990.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040464
  • 7. 小谷汪之編『権威と権力』,1990.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040472
  • 8. 板垣雄三編『歴史のなかの地域』1990.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040480
  • 9. 川北稔編『世界の構造化』,1991.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040499
  • 10. 板垣雄三編『国家と革命』,1991.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000040502
岩波書店のテーマ別歴史論集。各巻に一本から二本のイスラーム関連論文が収められています。同じテーマで他地域を扱う論文も収められているので、比較の視座が得られるでしょう。

 

岩波書店「講座 東洋思想」,1988-1989.[各巻所収論文一覧]
  • 3.『イスラーム思想1――イスラーム思想史,イスラーム思想の展開』,1988. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000103237
  • 4.『イスラーム思想2――イスラーム思想の特質』,1989. [KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000103245
イスラーム思想のエッセンスが二冊に凝縮されています。歴史的展開と法学、哲学、神学の論点がバランスよく記述されています。もっとも思想系が苦手ですとつらい思いをします。

 

筑摩書房「講座イスラム」1985,1986.[各巻所収論文一覧]
  • 1.中村廣治郎編『イスラム―思想の営み』,1985.[三田所蔵]
  • 2.森本公誠編『イスラム―転変の歴史』,1985.[三田所蔵]
  • 3.佐藤次高編『イスラム―社会のシステム』1986.[三田所蔵]
  • 4.板垣雄三編『イスラム―価値と象徴』1986.[三田所蔵]
「講座イスラーム世界」と似たような意図をもったシリーズ。こちらは『イスラム世界』に連載された講座を再編成したものです。なお、各巻末に若干の解説付きの文献案内があります。

 

東洋経済新報社「イスラム世界の人びと」1984.[各巻所収論文一覧]
  • 1. 上岡弘二,中野暁雄ほか編『総論』,1984[KOSMOS-OPAC]ISBN: 449281261X
  • 2. 佐藤次高,富岡倍雄編『農民』,1984[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4492812628
  • 3. 永田雄三,松原正毅編『牧畜民』,1984[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4492812636
  • 4. 家島彦一,渡辺金一編『海上民』,1984[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4492812644
  • 5. 三木亘,山形孝夫編『都市民』,1984[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4492812652
生活類型ごとに編まれた各巻からなる人類学や社会史の方面からの論集。宮本常一も加わった東京外大AA研による「アジア・アフリカにおけるイスラームかと近代化に関する調査研究」のまとめです。なかなか目にすることの出来ない貴重な論考を多く含みます。また各巻テーマに沿った文献案内が巻末にあります。

 

学生社 前嶋信次編「オリエント史講座」1982-1986.[各巻所収論文一覧]
  • 4.『カリフの世界』,1982.[三田所蔵]
  • 5.『スルタンの時代』,1986.[三田所蔵]
  • 6.『アラブとイスラエル』,1986.[三田所蔵]
やたらと古くなっている感じがして、実はまだあまり古くなっていない論集。「オリエント」という地域が焦点です。したがって、東方すぎたり西方すぎたりするとあまり論文が載っていません。

 

評論社 「世界の女性史」1975-1978.[各巻所収論文一覧]
  • 13.『東方の輝き』,1977.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4566053628
  • 14.『閉ざされた世界から』,1977.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4566053636
女性史というジャンルからの論集。マムルーク朝の初代スルタン、シャッジャル・トゥッドゥルの伝承なども載っていてなかなか貴重な二冊です。13巻が前近代、14巻が近代~現代です。

 

岩波書店「講座 世界歴史」旧版,1969-1970.[各巻所収論文一覧]
  • 7. 『中世1――中世ヨーロッパ世界(1)』,1969.[三田所蔵]
  • 8. 『中世2――西アジア世界』,1969.[三田所蔵]
  • 10. 『中世4――中世ヨーロッパ世界(2)』,1970.[三田所蔵]
  • 13. 『中世7――内陸アジア世界の展開(2);南アジア世界の展開』,1971.[三田所蔵]
  • 15. 『近代2――近代世界の形成(2)』,1971.[三田所蔵]
  • 20. 『近代4――近代世界の展開(4)』,1971.[三田所蔵]
  • 21. 『近代5――近代世界の展開(5)』,1971.[三田所蔵]
  • 22. 『近代9――帝国主義時代(1)』,1971.[三田所蔵]
  • 23. 『近代10――帝国主義時代(2)』,1971.[三田所蔵]
  • 24. 『現代1――第一次世界大戦』,1971.[三田所蔵]
  • 25. 『現代2――第一次世界大戦直後』,1971.[三田所蔵]
  • 27. 『現代4――世界恐慌期』,1971.[三田所蔵]
  • 28. 『現代5――1930年代』,1971.[三田所蔵]
  • 29. 『現代6――第二次世界大戦』,1971.[三田所蔵]
  • 30. 『現代歴史学の課題』,1971.[三田所蔵]
1970年代はじめの歴史学集大成。発展段階論にしばられているような記述も散見できますが、敬遠するにはあたりません。実証研究の基礎がほぼ固まったのがこのころですから、いまでも研究の出発点となしうる論文が数多く収められています。

 

東京大学出版会「講座 東洋思想」,1967.[各巻所収論文一覧]
  • 7. 『イスラムの思想』,1967.[白楽所蔵]
イスラーム思想の論集。ただし後の岩波のものとは違って、それほど「思想思想」していませんので、意外と読みやすいかもしれません。

 

辞典を「読む」

最近の辞典は「読む辞典」という概念が導入され、個々の項目を読んでもそれなりにおもしろく読めるようになっています。何の気なく、暇なときにでもペラペラとめくりましょう。そして、ある項目を読んだら、その中で登場する他の語を調べ……とどんどんリンクしていくと、楽しく時間をつぶせます。また2001年9月11日のテロのあと、2002年中に「イスラム事典」の増補改訂版を含めて、総合的な事典が三冊も発行されました。まったく古くなっていない事典を手に取ることができるのも魅力的です。

2002年の一連の事典の改題を書いた工具書は出ていないので、拙いながら私が解説を試みます。なお本節は網羅的な工具類の紹介を試みているわけではありません。最低限の手近なものとイスラームには直接関係ないものだけを紹介します。さらに、さまざまなものを知りたければ、第二章で紹介する「イスラーム研究ハンドブック」などの工具書の項を参照してください。

辞典類は原則として、新館1階レファレンスカウンター向かって右、三つ目の書棚の手前側、一番奥にあります。

日本イスラム協会編『イスラム事典』平凡社,1984.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4582126014
日本イスラム協会編『新イスラム事典』平凡社,2002.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4582126332
イスラームに関する基本事項を、きちんと説明している事典です。まず参照すべきは、この事典です。また、記述も丁寧でわかりやすいので、とりあえず読むのにも向いているでしょう。旧版は1982年の出版でしたが、平凡社の経営危機と緊急出版という困難をのりこえて2002年に新版が発行されました。増補された項目(巻頭の便利な総説も含めて)は300あまり、また既存の項目もかなり修正されています。その間の日本のイスラーム研究の進展がうかがわれます。なお、旧版に関しては、東京大学東洋文化研究所がオンラインでデータベースを提供しています(イスラム事典検索ページ)ので、手軽に利用できます。

 

全般に歴史的項目(特に政治史、社会史)に強い印象を受けます。旧版では、現代関連は壊滅的でしたが(出版年からいって当然)、新版ではかなり充実してきていますし、アフリカや東南アジア、地中海などについての増補が数多くあります。また社会史についての充実ぶりは、素晴らしいものです。

旧版と新版をどちらを使うか。まず旧版にあって、新版で消滅した項目はあまりありません。記述についても、旧版のほうがどう考えてもいいだろうというものもほとんどありませんし、ほとんどが改訂されています。したがって、これから手にするなら新版を選ぶべきです。新版の難をいえば旧版より高いこと、そして紙が厚いことです。より詳しいことは、三浦徹「新イスラム事典について」『イスラム世界』59,2002.を参照してください。

大塚和夫,小杉泰,小松久雄,東長靖,羽田正,山内昌之編『岩波イスラーム辞典』岩波書店,2002.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000802011
例のテロ後に新たに発行された辞典。項目数は『イスラム事典』の4倍ほどになり、あえて「辞典」となっている意味はそこにあります。近現代に強い傾向があり、現代の組織・政党、人名はかなり綿密に挙げてあります。特に現代政治は「イスラム事典」(旧版)では刊行年から当然湾岸戦争さえも含まれないわけで、我々はこの分野にかかわる事典をはじめて手にしたといってよいでしょう。どちらにしろ、とにかく詳細です。全部の項目を読むのに一週間かかりました。では、以下こまかいことを。

 

概念的な項目が非常に充実しています。思想史や法学・モラルエコノミーの関連項目は、現代とのつながりも説明しており、「イスラム事典」(旧版)と比べても大変詳しいものといえるでしょう。さらに、非アラブ圏への目の配り方が細やかです。特に中央アジアが充実しています。非イスラーム世界におけるムスリムについての記事が多いのも特色といえるでしょう。

その他、意外に建築史・美術史、特に陶器とモスク建築に関して詳しいです。また、どう考えても山内さんの趣味ですが、日本に関連する項目が異様に詳細です。「新井白石」とか「乃木希典」なんて項が立てられています。付け加えて、表記・転写法が比較的厳密です。

一方で欠点は、前近代の歴史的な事件についての項目は、かなり端折ってある感じがすること、各記事末尾の参照項目や索引については不備が目立つことでしょうか。関連項目でも違う執筆者の場合、参照が設定されていないことがありますし、巻末索引は項目一覧にすこし足したもの、という感じです。よって「読む」にはあまり向いていないといるでしょう。そして、高いです。需要を考えればこの程度かもしれませんが、おなじ岩波の「現代中国事典」が1457ページで6600円であることを考えると、1257ページで7500円は少々考えものです。装丁はきれいですけど。

総じて、持っておいて損はない辞典という感じです。ただし短所もないわけではないとおもうので「イスラム事典」と併せて参照(特に歴史の分野での工具としての使い勝手からいえば、少々ものたりない)というスタイルが推奨されます。「イスラム事典」(旧版)がイスラーム史の事典としての面が顕著であったとすれば、「岩波イスラーム辞典」は地域研究としての側面が強いといってよいでしょう。

前掲の三浦さんの『新イスラム事典』の紹介によれば、本辞典では、『イスラム事典』旧版に項目がある場合、その項目についての記事の依頼は『イスラム事典』での執筆者にはしていないそうです。したがって本辞典とイスラム事典を併せ読むことの価値はより高くなると言えるでしょう。

片倉もとこ責任編集『イスラーム世界の事典』明石書店, 2002.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4750315478
装丁は辞典というより本。編者を見れば分かるとおり、人類学方向にめったやたらと強いです。コンセプトは「生きているイスラーム」「生活のイスラーム」です。あえて「イスラーム世界」となっているのは、そのあらわれでしょう。「クルアーン・コンクール」なんて見慣れない項目も立てられています。

 

歴史的な項目についても、砂漠の生活、衣服、都市システムなどのソフト面が非常によく記述されています。さらに「女性」などの関連の項目も充実しています。各項目ひとつひとつの文章がよく推敲されている感じがしており、写真、イラストが多く、割付も洒落ていて活字も読みやすいのが特徴です。したがって「読む」のにもっとも向いています。人びとの暮らしに密着したことを考えたい人は、一度手に取るとよいと思います。

Luis B. et al. (eds.), The Encyclopædia of Islam, Vol.1-, new ed., Leiden, 1960-.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 9004081143
言わずとしれた最強の事典The Encyclopædia of Islamです。上記の和書の事典で探したい項目が見つからなければ、とっととこれに当たったほうが幸せになれます。また項目末尾に、その項目に関わる基本文献が挙げられているので、これも便利です。

 

もちろん英語で書かれていますが、項目名は概念的なことであれば、基本的にアラビア語ラテン転写で出ています(たとえばjusticeではなく‘adlで出ている。またジハードなどはjではなくdjですので気をつけてください)。『イスラム事典』などで綴りを確認した上で使用するとよいでしょう。

ただし2003年4月現在、第11巻までの刊行でVまでしかありません。つまり未完。しかも刊行され続けて40年。第一巻などは、すでに40年前のものだということも記憶の片隅に置いておいてよいことだと思います。図書館のレファレンスカウンター並びの書棚にあります(但し11巻は三田にはありません)。なお、一緒に旧版も置いてありますが、こちらはさらに50年前つまり一世紀近く前のものです。

これまで刊行された分をまとめたCD-ROMが出ており、レファレンスカウンターに申し出れば使用することができます。

Yar-Shater E.(ed.), Encyclopædia Iranica, Vol.1-, London and Boston, 1982-.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 0710090994
こちらはイランの辞典。やはり刊行途中ですが、Enc.Islamなみの分量になりそうなので、かなり細かいことまで載っています。現在三田では8巻(10巻まで出ていますが配架は8巻までで、なぜか三田に9巻はない)etemad saltanaまで見ることができます(2003年4月現在10巻が整理済になりました)。半年前までオンラインでただで引けたのですが、有料になってしまいました。

 

『歴史学事典』弘文堂, 1994-.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4335210310
歴史学一般の事典で、テーマ別に巻がわかれています。各項目は非常に詳細に書かれています。しかも、読んでいて楽しい事典でもあります。たとえば、「平和(イスラムの)」とか「池」とか「コルドバの殉教」とか「犬(イスラムの)」とか、とにかく何でも項目が立てられています。また、項目それぞれに参考文献が付いているのも、よい点です。なにか、ポッとおもいついたことを、とりあえず引いてみるのがおすすめです。全巻の完結が待ち遠しい。以下に各巻を示します。なお、このシリーズは事典であるにもかかわらず、レファレンスではなく新館地下1階の歴史学の場所にあり、貸出も可能です。

 

  • 1. 交換と消費
  • 2. からだとくらし
  • 3. かたちとしるし
  • 4. 民衆と変革
  • 5. 歴史家とその作品
  • 6. 歴史学の方法
  • 7. 戦争と外交
  • 8. 人と仕事
  • 9. 法と秩序
  • 10. 身分と共同体
  • 11. 宗教と学問(未刊)
  • 12. 王と国家(未刊)
  • 1?. 所有と生産(未刊)
  • 1?. コミュニケーション(未刊)
  • 1?. ものとわざ(未刊)
  • 別巻. 総索引(未刊)
『事典 イスラームの都市性』亜紀書房, 1992.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4750592099
「イスラーム地域研究」の一回前の大プロジェクトの成果。五十音順に並んでいるわけではなく、さまざまな角度から都市性を分析する事典です。イスラーム世界の都市だけでなく、「平城京」とか「長崎とムスリム商人」とかいろいろな項があります。なお、これは社会学の都市の分類なので、地下一階、階段を降りて右折、右折で、閲覧席を抜けて奥に行った左側のところにあります。

 

目的なく雑誌を読む

目的の論文をみるためでなく、ただぱらぱらと専門誌をめくるともしかしたら興味のあることが載っているかもしれません。イスラーム研究と関連する主な雑誌は日本語では次の通りです。あわせて総目次が閲覧できるものについては、その所在を示します。

和文

欧文

欧文でも主なものを挙げます(つまり私が参考文献中でよく目にするもの)。

  • Middle East Journal:MEJ,1947-.[KOSMOS-OPAC]ISSN: 00263141
  • Middle Eastern Studies:MES,1964-.[KOSMOS-OPAC:日吉所蔵]
  • International Journal of Middle East Studies:IJMES,1970-.[KOSMOS-OPAC]ISSN: 00207438
  • Revue des Etudes Islamiques,1927-.[三田所蔵:四階洋雑誌]

イスラーム史じゃない本も見てみる

本節は100%個人の趣味です。強制するつもりはありません。思いついたら足していきます。

民族と国民国家

イスラーム史を学んでいると民族とか国家とかの呪縛をまずほぐさねばなりません。そのような問題に関わる基礎文献を紹介します。各論を考える前にまず方法論的な整理をしておきましょう。

  • アンダーソン, B.(白石さや・白石隆訳)『想像の共同体』リブロポート,1987;new ed., NTT出版, 1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 487188516X
  • ホブズボウム, E.;レンジャー, T.(前川啓治訳)『創られた伝統』紀伊国屋書店,1992.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4314005726
  • スミス, A.D.(巣山靖司ほか訳)『ネイションとエスニシティ』名古屋大学出版会,1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4815803552
  • ゲルナー, E.(加藤節監訳)『民族とナショナリズム』岩波書店,2000.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4000021966
  • 関根正美『エスニシティの政治社会学――民族紛争の制度化のために』名古屋大学出版会,1994.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4815802297

漂う「日本」と日本のあいだ

我々は、日本ではない場所の、それも違った時代のことを考えようとしています。そうして考えると自然に「ここが日本と違う」という比較の発想が出てくるでしょう。しかしその時言及した「日本」、我々の知っている「日本」というものが、果たしてどこまで有効な視座なのか。40年前の日本は「日本」だったのか。私たちの意識とイメージの狭間に漂う「日本」像と日本の間に橋を架けます。

  • 宮本常一『忘れられた日本人』未来社,1960;rep. 岩波書店(岩波文庫),1984.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 400331641X
  • 宮本常一,山本周五郎,楫西光速,山代巴監修『日本残酷物語』全5巻, 平凡社,1959-1960;rep.平凡社,1972;rep.平凡社(平凡社ライブラリー),1995.[三田所蔵]
  • 小熊英二『単一民族神話の起源――「日本人」の自画像の系譜』新曜社,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4788505282

国際政治のアクターたち

東洋史専攻でも、意外と近現代をテーマとする人たちが多いように思えます。世界が分割されてゆく中で、イスラーム世界もまた国際政治と無縁ではありませんでした。表層から見れば、国家対国家という、国家がアクターとなる舞台です。たとえば、大英帝国とオスマン帝国というように。しかし、国際政治、特に近現代のそれは、膨大な資料とともに、国家の政策を決定した人びと・省庁といった、さらに細かいアクターたちの行動まで迫れるのです。たとえばイギリスの対中東政策で言えば、外務省、植民省、インド政庁、陸軍といったそれぞれの省庁が、必ずしも一枚岩の政策を追求したのではありません。そして、また国際経済という巨大なアクターが目に見えるかたちで立ちはだかっているのもこの時代からです。前者はキューバ危機における合衆国の政策決定を三つのアプローチから、後者は国際政治が国際政治として構造化されてゆく世界を活写します(カーは「史学概論」の教科書の著者としてのみ記憶されるべきではありません!)。

  • アリソン, G.T.(宮里政玄訳)『決定の本質』中央公論社,1977.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4120007340
  • カー, E.H.(井上茂訳)『危機の二十年――1919-1939』岩波書店,1952;rep. 岩波書店(岩波文庫),1996.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4003402219

あの頃――空間へのまなざし

  • ブローデル, F.(浜名優美訳)『地中海』全5巻, 藤原書店,1991-1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4938661373
  • コルバン, A.(渡辺響子訳)『記録を残さなかった男の歴史――ある木靴職人の世界1798-1876』藤原書店,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4894341484
  • ダーントン. R.(海保真夫,鷲見洋一訳)『猫の大虐殺』岩波書店,1986;rep. 岩波書店(同時代ライブラリ),1990.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4002600173
  • 井上章夫『愛の空間』角川書店,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4047033073

帝国を生きる

  • アシモフ,A.(岡部宏之訳)『銀河帝国興亡史』全7巻,早川書房(ハヤカワ文庫SF),1984.
  • 根津由喜夫『ビザンツ――幻影の世界帝国』講談社(講談社選書メチエ),1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 406258154X
  • 石光真清『城下の人』『曠野の花』『望郷の歌』『誰のために』龍星閣,1958-1977.[日吉所蔵]
  • リッツア,G.(正岡寛司監訳)『マクドナルド化の世界――そのテーマは何か』早稲田大学出版部,2001.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4657014137

近代という冷たく燃える焔の中で

  • フーコー, M.(田村俶訳)『監獄の誕生――監視と処罰』新潮社,1977.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4105067036
  • バルト, R.(宗左近,諸田和治訳)『エッフェル塔』審美社,1979;rep. 筑摩書房(ちくま学芸文庫),1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4480083472
  • ハーバーマス, J.(細谷貞雄, 山田正行訳)『公共性の構造転換――市民社会の一カテゴリーについての探究』未来社,1973;2nd ed.,未来社,1994.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4624011236

未来、と、夢

  • 山内進『北の十字軍――「ヨーロッパ」の北方拡大』講談社(講談社選書メチエ),1997.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4062581124
  • 田村明『江戸東京まちづくり物語――生成・変動・歪み・展望』時事通信社,1992.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4788792095
  • バーナーズ=リー, T.(高橋徹監訳)『Webの創成――World Wide Webはいかにして生まれどこに向かうのか』毎日コミュニケーションズ,2001.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4839902879
  • ハタミ, M.(平野次郎訳)『文明の対話』共同通信社,2001.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4764104822

第二章 ネタを深める

ネタを見つけたらそれに関連する知識を調べたいと考えることでしょう。そして、ネタを見つけても先行研究を熟知しなければ「車輪の再発明」をすることになります。そのためには、そのネタを深める、言い換えれば関連文献を見つけることが重要になります。以下では、その方法を説明します。三田メディアセンターの「資料の探し方(学部学生のための情報検索ツール選)」も参照してください。

概論

関連文献を探すには、さまざまな方法があります。まずは、どんな風に探すかをパターン別に示します。その後で、それぞれのやり方を詳しく説明します。

とりあえず、ある地域ある時代の概説を軽く知りたい。
本稿で挙げた概説で充分です。第一章を読んでください。

 

ある大きなテーマ(イランの歴史とか)に関連する単行本を網羅的に知りたい。
慶應義塾で持っているものについてはKOSMOS-OPACの件名検索分類検索を使用します。所蔵にこだわらないならNACSIS-WebcatやNDL-OPAC、LC件名検索を使用します。

 

ある中くらいのテーマ(シーア派とかマムルーク朝のエジプトとか)に関連する単行本を網羅的に知りたい。
慶應義塾で持っているものについてはKOSMOS-OPACの件名検索を英語で行います。所蔵にこだわらないならNACSIS-WebcatやNDL-OPAC、LCの件名検索を使用します。

 

ある中くらいのテーマ(シーア派とかマムルーク朝のエジプトとか)に関して定評ある単行本・論文を知りたい。
解題付きの書誌を使用します。分かっているとは思いますが、KOSMOS-OPACでは単行本になっていない論文は検索できません

 

ある中くらいのテーマ(シーア派とかマムルーク朝のエジプトとか)に関して論文を知りたい。
NDL-OPACでキーワード検索を、およびIndex Islamicusで地域や時代を特定した検索やキーワード検索などをします。それでも、中くらいのテーマではかなり大量の結果が出てくるでしょうから、覚悟が必要です。

 

ある小さなテーマ(オスマン朝1627年の大宰相交代の背景における後宮勢力の役割について、とか)に関して知りたい。
  1. 解題付きの書誌で、ちょうどよいものがないか、とりあえず見てみます。
  2. NDL-OPAC、「日本における中東・イスラーム研究文献目録の検索」、およびIndex Islamicusでテーマの時代や分野で、何か書いている研究者の名前を入れて検索します。
  3. NDL-OPAC、「日本における中東・イスラーム研究文献目録の検索」、およびIndex Islamicusで関係ありそうな言葉をバカスカ打ち込んで検索します。それ以外の解題なしの書誌も目を皿にして走査してみます。
  4. Encyclopædia of Islamや『歴史学事典』などで関係ありそうな言葉を引いてみて、その項最後に挙げられている文献を見ます。そこから芋づります。
  5. 解題付きの書誌で、その時代に関する定評ある概説を見つけ、その概説中の註や文献リストで挙げられている文献を走査します。見つけたら、とにかく芋づる式に探します。
  6. Googleで関係ありそうな言葉を日本語と英語で検索します。.eduや.acドメインのサイト(すなわち教育機関のドメイン以下のサイト)があれば、それを見ます。もしかしたらその中で、なにか文献に言及しているかもしれません。そしてその文献から芋づります。
  7. 解題付きの書誌などで、その分野について一番知っていそうな人を見つけます。その人の所属機関のWebサイトを見て、連絡手段を知ります。しかるべきのちに気合いで聞きます。不安なら先生を通します。
  8. 英語ができるなら、イスラーム研究のメーリングリストやニュースグループに加入して聞いてみるのも手でしょう。
  9. それでもなければ、文献がないのでしょう。あなたが文献を作ります。もしかしたら史料がなくて、どうにもならないのかもしれませんが。

KOSMOS-OPACを使う

まずは、みなさんも最低一度は使ったことがあるであろうKOSMOS-OPACで、関連書籍を見つけてみましょう。慶應義塾図書館は前嶋文庫をはじめとしてなかなか資料の収集でも優秀です。とりあえずは、その蔵書を探しましょう。

ただしKOSMOSⅡ OPACはあくまで、慶應義塾図書館の所蔵目録だということを忘れないでください。本筋から言えば、書誌などで文献を見つけ、それを本塾図書館が持っているか確認するのがOPACです。従って、本来ならば、この項は第四章に含まれるべき項目です。たまたま手近で、もっとも利用頻度が高そうな検索ツールがOPACなので、ここに記載されているだけです。

KOSMOSⅡ OPACは、丸善がこれまで開発してきたOPACの中でもかなり強力なデータ検索機能を実装しています。それを使わない手はありません。では、まずOPACを開いてみましょう。(KOSMOS-OPACキーワード検索の表示画面)

ご覧のように、キーワード検索の画面では、上から、キーワードによる検索(全て、書名・誌名中の語、正確な書名・誌名、著者名、人名件名、出版者、ISSN、ISBN、内容注記、その他の番号)、主題による検索、絞り込み検索となっています。

この中で書名、著者名以外のキーワード検索や、主題による検索(件名・分類)を使う機会はあまり無かったのではないでしょうか。実は、これを使いこなすことがKOSMOSⅡ OPACをより便利にするのです。

また、さらに上記の各項で、And検索Or検索Not検索を行うことが出来ます。特にNot検索の実装はWeb-OPACでは珍しいので活用してみましょう。たとえば「件名に、コーランないしはKoranないしはQuranを含み、かつ英語ではなく、1980年以降に出版されたもの」という指定が出来ます。

キーワードによる検索

キーワード検索の対象となる項目のリストをドロップダウンした状態のOPAC検索画面を表示しましょう。

キーワード検索は、著者や題名などのキーワードで調べるモードです。デフォルトで、キーワード入力欄が二つ表示されており、ひとつ目が「書名・誌名中の語」、ふたつ目が「著者名」となっています。

これらのキーワード入力欄は、増やしたり減らしたりすることができます。そしてこれらのキーワード間でも、And検索Or検索Not検索を行うことが出来ます。キーワード入力を増やせば増やすほど絞り込みが正確になるでしょう。

全般的な注意とtips

各項目について詳説する前に全般的な注意を行います。HELPに書いてあることの繰り返しですが。

とにかく気をつけて欲しいのが、Web上の検索サイトのお約束と違って、スペースはand検索の区切り文字ではないということです。つまりYahoo!などでは、「イラン 革命」と入力すれば、「イラン」と「革命」という語を含むリソースを検索しますが、KOSMOS-OPACは正直に「イラン 革命」という語、およびスペースを削除した「イラン革命」という語を含む書籍を検索します。したがって「イランの革命」という書物はヒットしません。勘違いをしている人が驚異的なまでに多いです。私もしばらくこれでハマりました。

and検索をするにはキーワード入力欄を増やせばよいのですが、面倒です。同一フィールド内でand検索をするには、*(アスタリスク)を用います。上記の例では、「イラン革命」です。アスタリスクは半角でも全角でも構いません。同様にor検索は「Not検索は「を用います(これも一般的なマイナスじゃない)。

各項目について
書名・誌名中の語
そのまんまです。書名・誌名に含まれる言葉を入力します。部分一致なので、書名の一部でもヒットします。また、たいていの場合、副題中の語もヒットします。ただし、くれぐれも上記の注意を忘れないでください。

 

書名が分かっていないときは、名詞はできる限り単語に分割してください。また、その時は助詞を入れてはいけません。オンライン検索のお約束です。たとえば「イラン立憲革命」は「イラン*立憲*革命」とします。こうすることで「イランの革命と立憲制」などという書名でも検索されます。日本語には分かち書きの伝統がありませんので、検索する方で対応する必要があるのです。

上の方法で一件もヒットしなかったら、一般的ではない言葉から削除していきます。「イラン*立憲*革命」では、どれも一般的ですが、歴史学の方法上、まず「立憲」を削ってみるのがオーソドックスです。そうすれば『イランの二つの革命』がヒットするかもしれません。

細かいことですが、「イランの歴史」系の概説が欲しいときなどは、「イラン*歴史」ではなく「イラン*史」とするほうがよいでしょう。日本では「地名」+「史」という使い方が一般的です。

調べたい言葉、たとえば「イスラーム神学」のように「イスラーム」という語が入る場合は、常にそれを「イスラム」「回教」とした語でも検索してみてください。これは以下のどのプロセスでも共通です。

正確な書名・誌名
そのまんま。こちらは完全一致です。自信があれば使ってもいいでしょう。

 

雑誌を探すときはこちらを使うほうがいいです。雑誌は一般的な言葉がタイトルになっていることが多いためです。

著者名
これまた解説の必要がありません。ただし複数著者の書物などの場合、必ずしも著者それぞれが著者名でヒットするとは限りません。また編者がいる場合は編者がここに入ってしまいます。

 

KOSMOS-OPACのヘルプにもありますが、たとえ訳書であっても、著者が非漢字姓の外国人の場合は、必ずアルファベットで入力してください。カタカナで打ってもヒットしません(たとえば「イブン」と入力しても「鎌倉遺文」関連しか出てこないでしょう)。

また必ず姓は先にします。ただし、姓のほかに最低限イニシャルは付してください。たとえば、バーナード・ルイスなら「Lewis,B?」と姓の後にコンマ(半角)を打ち、イニシャルを付して前方一致を意味する?(それ以下はどうでもよいということ。つまりLewis, Bernardでも、Lewis, Barbaraでもヒットする)をつけます。そうでないとヒット量が半端でなくなって、OPACが止まりかねません。

上記のファーストネームのイニシャルを付しての検索における検索式について、疑問を持たれた方がいるかもしれません。上記のような方式をとる理由はKOSMOSⅡ OPACが著者名検索については前方一致固定になっているためです。たとえば「Lewis*B?」とすると、「Lewis」という姓の著者および「B」から始まる姓の著者をともに含む書籍(つまり著者が複数)を探しに行きます。したがって、バーナード・ルイスの著作はヒットしないのです。

人名件名
伝記など、ある人物が当該書籍の何らかの対象となっている場合、その人物名がこのフィールドに入ります。たとえば張佐良(早坂義征訳)『周恩来・最後の十年――ある主治医の回想録』日本経済新聞社,1999.では「周恩来」がこのフィールドに入力されます。

 

出版者
一般的には出版社のことです。あまり使用する機会はないとおもいます。

 

ISSN
ISSNとはInternational Standard Serial Numberのことです。ISSNは、世界中の雑誌に一意のナンバーがふられています。したがって、ISSNさえあれば、ある雑誌を特定できます。ISSNがわかっている限り、雑誌を検索するにはISSNを使用してください。ISSNに含まれているハイフンは取り除いて、数字のみを入力します。

 

もっともISSNがあっても、KOSMOS-OPACに入力されていないものがあります。代表的な例としては『イスラム世界』。馬鹿馬鹿しいですが、そこは注意してください。

ISBN
ISBNとはInternational Standard Book Numberのことです。ISBNは、世界中の書籍に一意のナンバーがふられているURNです。その辺で買った本でも背表紙を見れば、ISBNが記載されているはずです。ですからISBNさえあれば、著者がわからなかろうが、題名がわからなかろうが、ある書籍を特定できます。誤入力による誤ヒットを防ぐためにも、ISBNがわかっている限り、書籍を検索するにはISBNを使用してください。ISBNに含まれているハイフンは取り除いて、数字のみを入力します。

 

もっともISBNがあっても、古い書物については、KOSMOS-OPACに入力されていないものがあります。

内容注記
KOSMOS-OPACでは、「岩波講座 世界歴史」などのシリーズはまとめて表示することができます。その場合に各巻の情報が入るのがこのフィールドです。「書名=世界の歴史」「内容注記=イスラーム」などと使います。

 

その他の番号
たとえば、本塾図書館が独自に、物理的な各書籍一冊一冊に対して与えている一意のBook IDや請求番号などです。

 

全て
上記全てです。しかし、各書籍の付録として付いている「文献案内」や「年表」などを記した「注記」フィールドは、残念ながら検索できません。

 

主題による検索

本節はどちらかというと、キーワード検索よりも、こちらを説明したくて書いてあります。たぶん使ったことがないでしょうから、試してみてください。主題による検索には、「件名による検索」と「分類による検索」があります。

件名による検索
主題による検索のうち、件名検索の対象となる項目のリストをドロップダウンした状態のOPAC検索画面を表示しましょう。

では、主題による検索のうち、まず件名について説明します。件名とは、書物の内容についてのキーワードのことで、複数設定されています。たとえば「トルコ・歴史」など。

この項目についての検索対象は、デフォルトで「全て」となっています。普通はこれで構いませんが、各項目について説明しておきます。ここで注意しておきたいのは、日本語で検索するより、英語で検索したほうが、より詳細に検索できるということです。その理由は下に記してあります。このフィールドは前方一致です。「Safavi」か「Safavid」か迷ったら、「Safavi?」としてください。

BSH
Basic Subject Headings「基本件名標目表」で件名を検索します。この標目表は、日本の図書館で標準の標目表です。日本語で調べられるので楽ですが、たとえばサファヴィー朝に関する本でも「イラン--歴史」などの件名が精一杯なので、軽く検索することしかできません。どのような標目があるかについてはOPACトップの「索引語一覧」から「件名(BSH)」で検索します。書籍の形では日本図書館協会件名標目委員会編『基本件名標目表』日本図書館協会,4th ed.,1999.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4820499122があります。

 

つい最近まで標目表では、イスラームやイスラムではなく「回教」という表記が用いられていたということにも注意してください。代表的な標目としては「歴史――回教圏」などがあります。「回教圏婦人」などとして使ってください。

MESH
「医学図書館件名標目表」。要するに医学用。この際、どうでもいいです。

 

LCSH
Library of Congress Subject Headings「議会図書館件名標目」で件名を検索します。洋書ではこちらが標準となります。BSHと違い、かなり細やかな件名が設定されています。どのような標目があるかについてはOPACトップの「索引語一覧」から「件名(LCSH)」で検索します。

 

たとえば上で挙げたサファヴィー朝関連の文献でしたら「Iran, Politics and government」および「Iran, History, Safavid dynasty, 1501-1736」のような件名が設定されます。したがって、「主題による検索」を行う際には、英語で検索するのが賢い方法です。

LCSHに記載される件名はLibrary of Congress, Library of Congress Subject Headings, Washington,197x-.に記載されています。最新版は第25版でCataloging Policy and Support Officeから毎週追加が出ます。

その他
慶應義塾図書館では、件名項目に、上記以外の方法で入力しているものもあります(かなりの量)。たとえば羽田正『勲爵士シャルダンの生涯』では、BSHやLCSHに従った件名はありませんが、「Chardin, John, Sir, 1643-1713」という件名が付されています。この場合は、滅多に日本語では入力されません。このことも英語で「全て」を検索したほうがよい理由です。

 

分類による検索
分類による検索のうち、件名検索の対象となる項目のリストをドロップダウンした状態のOPAC検索画面を表示しましょう。

次に分類による検索の項目についてです。分類は、ある本を分類表のあるカテゴリにあてはめ、その本に分類表上の番号を与えたものです。件名と違って番号ですので、番号さえわかれば検索がしやすいと言えます。こちらもデフォルトで「全て」となっています。普通はこれで構いませんが、一応各項目について説明しておきます。なお、分類番号は時に二つ以上の番号が付与されることがあります。

NDC
NDCとはNippon Decimal Classificationの略で、『日本十進分類法』という本の分類数字です。3桁+コンマ以下によって規定されています。日本の図書館での書架は、一般的に日本十進分類法によって配列されています。したがって当分類法を知ることは、検索だけではなく、上記に掲げた図書館をうろつくためにも非常に重要です。最低限次の第一レヴェルだけは覚えてください。

 

  • 000:総記
  • 100:哲学
  • 200:歴史
  • 300:社会科学
  • 400:自然科学
  • 500:技術
  • 600:産業
  • 700:芸術
  • 800:言語
  • 900:文学

関連のありそうな分野については、「Appendix.1」で列記します。もっとも、そちらを見てもらえれば分かるとおり、件名の場合と同様で、NDCではイスラーム関連のものについては、たいした分類がされません。

しかし、それでもやっぱり日本の図書館を利用する限りつきまとうものですから、知っておいたほうが身のためのような気がします。ついでですから、おおまかなことを解説します。

十進分類の名の通り、大まかな分類から順に、ひと桁ずつ細かくしていくのが、NDCの分類法です。たとえば、300(概念上は3ですが便宜上0を付して300と表記します)は社会科学です。第二桁にさらに2を付して320(同様に32)は法律です。さらに2を付して322は法制です。三桁目と四桁目の間にはピリオドが打たれます。そして322.9は外国法となります。これが基本です。

さて、「外国法」や「歴史」「政治事情」などは、それ以下で地域別に分けることができますね。そして、それらの分類は共通のものを使うことが出来るはずです。そこで作られたのが「一般補助表I-a.地理区分」で、地域ごとに分類がふられています。地理区分も十進分類で、たとえばアジアは2、インドは25、パキスタンは257、バングラデシュは(東パキスタンだったから)2576となります。この番号を「外国法」や「歴史」「政治事情」の概念的な分類に付すことで、地域分類が完成するわけです。外国法は322.9でした。論理的には322.9+25で322.925はインド法です。そして200+257で225.7はパキスタン史です(このとき200の0は削除します)。

以上が十進分類法の概要です。簡単ですね。なお、標目としてない項目については、NDC別巻の「一般補助表・相関索引編」の相関索引を利用するとよいでしょう(イスラーム関連のものはたいしたキーワードが載っていませんが)。以上に関して、より詳しいことは、もり・きよし原編(日本図書館協会分類委員会改訂)『日本十進分類法』日本図書館協会, 新訂9版, 1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4820495100を参照してください。なお、同書の巻頭「解説」は日本の大学のB.A.を持つ者は必ず一度は読んでおくべき文書だと思います。

DDC
海外で一般的なデューイ十進分類法のこと。私はよく知りません。一応NDCのご先祖様。ですが、分類の仕方は第一レヴェルから違います。
その他
分類方法には、大英図書館だの中国科学院だのいろいろな方法があります。それらのことです。

NDL-OPACを使う

NDL-OPACは国立国会図書館のOPACです。まずは、国立国会図書館:資料の検索を開いてみましょう。

国立国会図書館は、国内で発行されたものなら、論理的には何でも持っているはずです。NDL-OPACでは一般に出ていない博士論文なども検索できます。さらに2002年11月から、完全に公開されたかたちで「雑誌記事索引」を検索することができるようになりました。なお、後述するNACSIS-Webcatでは国立国会図書館の蔵書は検索されません。

書籍

日本の書籍なら、まず見つかることでしょう。件名などもわりと忠実に入力されているので、使ってみてもよいでしょう。

雑誌記事索引

NDL-OPACの最大の強みは、インターネット上から「雑誌記事索引」を利用できることです。「雑誌記事索引」には、学術雑誌などに投稿された論文の論題や著者などが登録されており、それを検索することが出来ます。これまでは契約をしてMagazine-Plusを導入している大学などからしか利用できませんでしたが、2002年11月より無料でインターネット上に公開されました。

なお1989年までの雑誌記事索引は書籍化された国立国会図書館編『雑誌記事索引 人文社会編』1948-1989[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4314100842があります。メインカウンター前の吹き抜けを囲む書架のうち、言語辞書の側にあります。

Magazine-Plusでも

Magazine-Plusは日外アソシエーツの運営する雑誌記事索引サービスです。実質的にNDL-OPACの雑誌記事索引と同じですが、こちらは記念論文集(~退官記念とか)が検索できる点、月2回の更新のため最新の論文の登録はNDL-OPACよりずっと速いという点が利点、1975年以降の国内発行の雑誌に限られることが欠点となります。

Magazine-Plusは、三田メディアセンター一階の貸出カウンターとレファレンスカウンターに挟まれたコンピュータ・スペースの手前四台および奥二台のWeb接続データベース用PC(利用時間は開館~レファレンスカウンター受付終了の17時50分まで)と、三階のWeb接続データベース用PC(利用時間は開館~閉館まで)で使えます。

使用方法は特に難しくありませんので、OPACの項で説明したキーワードの選び方などを考えて、検索してください。

その他のオンライン蔵書目録を使う

慶應義塾図書館や国立国会図書館が世界中で出版された全ての書物を持っているわけではありません。単に文献があるかどうか知るのであれば、どこの図書館で持っていても関係ありませんから、他機関の蔵書目録も調べてみましょう。

WINE
早稲田大学のOPAC、WINEです。「ワイン」と読むらしいです。使い方はKOSMOS-OPACと酷似しています。

 

東京大学蔵書検索
WINEやKOSMOS-OPACより若干使い勝手がいいシステムです。内容に簡略な説明を加えてある「コンテンツデータベース」と連動しているのが魅力的です。またi-mode版もありますので、授業中に書誌を示したくても忘れてしまった場合などに有用です。

 

NACSIS-Webcat
国立情報学研究所が運営する各大学の蔵書を横断的に検索できるWebcatシステム。検索機能は各図書館独自の検索システムより劣りますが、国内の数多くの図書館と大英図書館、オックスブリッジの図書館(接続機関一覧)を一気に検索できるのが強みです。実際には文献を手に入れる段階で、その強みが発揮されます。

 

Library of Congress Online Catalogs
アメリカ議会図書館。世界最大の蔵書数と言われています。洋書ならまず持っているのではないでしょうか。検索機能も充実しています。

 

Bibliothèque nationale de France – Catalogue general
フランスのビブリオテーク。フランス語書籍ならここです。

 

書誌を使う

文献目録の親玉のようなものを書誌と言います。特に解題のついている文献目録は、非常に役に立ちます。

解題付き

三浦徹・東長靖・黒木英充編『イスラーム研究ハンドブック』(講座イスラーム世界別巻),栄光教育文化研究所,1995.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4897110017
本書は、イスラーム研究に関わる工具類、文献紹介、語彙集、年表、地図などを備えた総合的なハンドブックです。この本を参照するとしないとでは、ずいぶんと文献の広がりの印象が変わるでしょう。一冊持っておくとよいように思います。なお、文献紹介の項目は以下の通りです。

 

  • 東長靖編:道具類
  • 小田淑子:コーラン・ハディース
  • 柳橋博之:法学
  • 東長靖:スーフィズム
  • 鎌田繁:シーア派等諸派
  • 塩尻和子:神学
  • 小林春夫:哲学
  • 飯塚正人:政治思想
  • 黒木英充:東方キリスト教
  • 藤井悦子:ユダヤ教
  • 私市正年:マグリブ・アンダルス(前近代)
  • 小山田紀子:マグリブ(近現代)
  • 清水和裕:マシュリク(前近代 11世紀以前)
  • 長谷部史彦:マシュリク(前近代12世紀~18世紀)
  • 黒木英充:マシュリク(近現代 シリア・イラク)
  • 長沢栄治:マシュリク(近現代 エジプト・スーダン)
  • 福田安志:マシュリク(近現代 アラビア半島)
  • 羽田正:イラン(前近代)
  • 小牧昌平:イラン(近現代)
  • 三沢伸生:トルコ(前近代)
  • 新井政美:トルコ(近現代)
  • 久保一之:中央アジア(前近代)
  • 宇山智彦:中央アジア(近現代)
  • 日野舜也:東アフリカ
  • 嶋田義仁:西アフリカ
  • 小名康之:インド(前近代)
  • 内藤雅雄:インド(近現代)
  • 弘末雅士:東南アジア
  • 片岡一忠:中国
  • 家島彦一:地域間コミュニケーション
  • 宮田律:国際政治におけるイスラーム
  • 岡野内正:国際経済とイスラーム
  • 臼杵陽:パレスティナ問題
  • 小杉泰:イスラーム復興運動
  • 吉村慎太郎:マイノリティ・エスニシティ問題
  • 加藤博:経済と社会:社会経済史から
  • 堀内正樹:社会と文化:社会人類学から
  • 大稔哲也:「聖者」と「聖者崇拝」
  • 三浦徹:ウラマー
  • 林佳世子:ワクフ
  • 宮治美江子:女性
  • 加納弘勝:社会分析の視点
  • 杉田英明:アラブ文学
  • 藤井守男:ペルシア文学
  • 勝田茂:トルコ文学
  • 麻田豊:ウルドゥー文学
  • 中原道子:マレー文学
  • ヤマンラール・水野美奈子:美術
  • 山田幸正:建築
  • 水野信男:音楽
  • 高野晶弘:映画・演劇
  • 鈴木孝典:科学・技術
  • 保坂修司:コンピュータ・ネットワークとイスラーム研究
『アジア歴史研究入門4 内陸アジア・西アジア』同朋舎出版,1984.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4810403696
日本語で先行研究を知るために使うのが『イスラーム研究ハンドブック』であるとすれば、こちらは研究とともに史料を知るのに非常に有用です。かなり古くなっているとはいえ、日本語で網羅的な史料紹介をしている書物は、いまだ本書しかありません。ただしそれぞれの項とも全て前近代だけです。

 

  • 間野英二:トルキスタン
  • 佐藤次高:イスラム総論(文献解題・工具類・概説書・雑誌)
  • 森本公誠:アラブ(前期)
  • 佐藤次高:アラブ(後期)
  • 本田實信:イラン
  • 濱田正美:トルコ
「回顧と展望」『史学雑誌』,1892-.[KOSMOS-OPAC]ISSN: 00182478
東京大学の史学雑誌五月号には、毎年の歴史学界の動向について「回顧と展望」と題して評論がのります。したがって、古い方から順番にこれを読むとおおむねの研究動向が分かるわけです。地域別、時代別のそれぞれの分野について、その当時の若手~中堅の研究者が執筆しています。図書館2階の西閲覧室(つまり中庭側)の大学紀要コーナー中、「東京大学」の項にあります。

 

なお、1985年分までについては史学会編『日本歴史学会の回顧と展望10 西アジア・北アフリカ 1949-1985』山川出版社,1988[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634311003でまとめられています。

『世界各国史』山川出版社[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4634413809
各巻巻末の文献紹介は、かなりしっかりしていますが、膨大に紹介するというわけでもないので、的確に読むべき本を見つけるには有用です。

 

解題なし

Index Islamicus,1958-[KOSMOS-OPAC]ISSN: 13600982
1958年にまとめられた文献目録。その後、逐次最新の研究をまとめて目録化、発行するようになりました。イスラーム研究上、最大の文献目録です。現在は年四回発行。時代、地域ごとに発表された論文が欧文を中心に掲載されています。三田メディアセンターでは、メインカウンター前の階段を下りて、正面一番右側の棚、その左端にあります。製本される前のものは、かなりどぎつい緑色なのですぐわかるでしょう。

 

1995年分までをまとめたCD-ROMが出されており、一回レファレンスカウンターで、「Index IslamicusのCD-ROMを貸して」といえば、貸してくれます(開館~17時50分まで)。全てを書籍で調べるには、とんでもない労力が必要なので、CD-ROMを使うのが賢いといえるでしょう。ただし、検索用のアプリケーションは賢くありません。一覧表の状態で印刷しても表題が切れ切れになったりして役に立ちません。フロッピーディスクをもちこみ、テキスト形式で保存した上で、Excelなりで編集して使うのが実用的です。

ユネスコ東アジア文化研究センター編『日本における中東・イスラーム研究文献目録 1868年-1988年』全2巻,1992.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4896563344
ユネスコ東アジア文化研究センター編『日本における中央アジア研究文献目録 1879年-1987年3月』全2巻,1988.[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4896563271
表題年号までの日本で発表された全ての研究が掲載されています。和文での論文を知りたければ、まずは本書にあたるのが確実です。若干古くなっているのは否めませんが、東洋文庫で「日本における中東・イスラーム研究文献目録の検索」(2001年8月30日更新・冊子に比べ6400件追加)と「中央アジア研究文献目録の検索」(2000年9月13日更新・冊子に比べ2550件追加)として、その後のデータを追加したデータベースをオンラインで公開しています。これを利用するとよいでしょう。

 

但し、1988年以降のものについては、必ずしも入力されているわけではありません。また、入力されていても、入力の不備や、クエリーインデックスのリレーショナル不足により、全てのキーワードで必ずヒットするというものではありませんので、いくつかキーワードを変えながら検索するとよいでしょう。

「イスラーム関係新刊書リスト」「最新主要欧文論文」『イスラム世界』[三田所蔵:三階東]
イスラーム関係で発表された最新の欧文論文を雑誌別に、イスラームおよびイスラーム世界に関連して出版された日本語の書籍、論文を地域、テーマ別に一覧できます。日本語の書籍の出版情報はなかなかないので、これを参照するとよいでしょう。1993年の第41号から設けられました。

 

本稿付属書「Appendix.2 論集イスラーム関連題目一覧
日本語論文の場合、雑誌に掲載された論文についてはNDL-OPACやMagazine-Plusで調べることができます。また、論集(たとえば『岩波講座 世界歴史』)や単行本に収められている論文でも、上記にあげた東洋文庫のデータベースで調べることが出来ます。しかし東洋文庫のデータベースは、新しい論集などに含まれる論文を必ずしも網羅していません。そうなると芋づる式に調べるか、偶然目にしていない限り、たどりつくことができません。それを補うために論集所収の論文題目一覧を作成しました。かなり抜けはありますが、ないよりはましでしょう。

 

参考文献を芋づる

ここまで、長々とOPACや書誌などのいろいろな使い方を説明してきました。しかしながら、文献目録のようなものは、その性格上、網羅的であって、個別的ではありません。したがってテーマを細かく絞れば絞るほど、目録などから関連文献を見つける困難さの度合いは増してゆきます。

引用註の利用

そのような時は、どうするのか。ここで学術論文という体裁が生きてくるのです。学術論文は、原則として、誰かの何らかの成果によってわかったことに言及する箇所には、註をつけて、何を根拠にそんなことをいっているかの情報源を示すことになっています。ですから、自分のテーマにぴったりの論文が見つからなくても、関連する論文をいくつか読んで、註に示された文献を次々にあたってゆくことによって、ぴったりの論文や、あるいは原典にたどりつくことができるのです。たとえば、ある論文で一行しか言及していないことでも、そこに註がついていて、文献が示されていれば、さきに見た論文の一行を導くために、註に示された文献では数十頁を費やしているかもしれません。そしてその数十頁には、これまた註が山ほど付けられているでしょう。

以上をふまえれば、文献目録をいくらか調べて、テーマにぴったりの論文が見つからなければ、それを文献目録などだけから、血眼になって探すのはあまり効率のよいことではないことがわかります。目録から探すと同時に、文献を芋づっていくことが、関連文献を探すスタイルとして推奨されます。

概説から

まずは、目録などから、ある中くらいのテーマに関する概説的な論文をみつけることです。そしてその概説についている註から、次の文献に当たり、さらにその註から、さらに次の文献を見つける、言うなれば文献の連鎖を辿ることによって、目指すテーマに直接関わる論文にたどり着くことが出来るでしょう。

たとえば「イラン立憲革命期のテヘランでのカーヌーン紙の流通状況」について知りたければ、書誌を検索すると同時に、イラン近代史の概説論文を見つけ、それを読んで、新聞について言及した箇所を探します。そしてその部分につけられた註から「イラン新聞史」に関わる論文をみつけます。そして、その「イラン新聞史」に関わる論文に、目指すテーマについて直接書かれているかもしれません。あるいは個々の新聞へ言及した論文についての註が付いていて、その中に「カーヌーン紙」に関する論文があるかもしれません。

また、似たような時代、地域の論文をいくつか読んで、必ず言及されている論文があるようなことがあります。それは、言及された論文が重要な研究であるということを示しています。自然科学の世界では、引用の回数で論文の重要さが決定される指標にもなっています。そのようなことにも注意してください。

研究史から

また「研究史」というジャンルの論文があります。このような論文は、特定のテーマについて、これまでの研究がどのように展開してきたかを整理しています。すなわち、特定のテーマに関わる「解題付き書誌」のようなものですから、ぜひ利用するべきです。このような論文を利用することで、自分の疑問は解決しているのか、あるいは現在最新の研究の関心はどこにあるのか、がわかります。

最後はWebにすがる

世の中にはテーマが細かすぎて、ぴったりのものが出てこないことがよくあります。これは、単に史料がないだけかもしれません。しかし一方で、単行本の場合に最低限の商業ベースにも乗らなかった、あるいは論文の場合、きちんとした研究者がそのテーマに関心を抱かなかった、などの理由が考えられます。しかし世界は広いもので、まったく別の仕事をしている「在野の学」ともいうべき人がWebで論文を発表していたり、あるいは学生や研究者がWebで研究ノートなどを公開しているかもしれません。そのようなリソースが利用できることも知っておくべきです。

Webで公開されているということは、全文が電子化されていることを意味します。したがって、Webで公開された情報は、Web上をおよぎまわる検索エンジンのロボットに、文中に含まれる一語まで拾われます。そして我々は、その情報を検索サイトから調べることができます。

検索エンジンの中でも特に優秀なのが、Googleです。ロボット型の検索サイトはどれでも、ある語で検索すると、その語が含まれるリソースを表示します。Googleでは、さらに表示するリソースを、見出し中に検索語が含まれたか、本文中に検索語が何回出現したか、あるいは研究機関など重要なサイトからリンクされているか、などを総合的に勘案して、重要そうな順に表示してくれます。表示されたそれらの情報を一つ一つみていけばよいでしょう。その中でも特に.eduや.acなどのドメインに含まれるリソースであれば、若干は信用がおけます。論文体裁のものがあって、なにか文献を見つけることができれば、しめたものです。

ただし、それらのリソースを100%信用してはなりません。論文が学術雑誌に掲載されているということは、専門家のそれなりのジャッジを経て掲載されているので、信用できるものだということなのです。ですから、Web上で集めた情報は、関連文献を見つけるためのもの、と割り切るのが吉です。信用できないリソースにもとづいた論文は、やはり信用できないものとなってしまうからです。

100%信用できないということは、過渡的な現象です。Semantic Webの理想が徐々に実現すれば、信用してよい指標も現れることと思います。現に電子工学や通信工学の世界では、紙ではなくWeb上のリソースをオリジナルとする場合も出てきています。

気合いで聞く

さて、本当に最後の手段、気合いで聞く、です。実は一番手っ取り早いのですが、あまりに多用するとただの「教えて君」だと思われますから、一応は上記の手順を踏んだ上で、実行すべきオプションです。

まず、第一に聞くべき相手は、図書館のレファレンス係の人です。それぞれ専門があるので当たりはずれはありますが、時々信じられないほど親切かつ博識で、まったく思いもつかなかった文献を教えてくれることがあります。逆に、こちらも知っているようなことしか教えてくれないこともあります。そのような時は、日を変えて再度アタックしてみましょう。

そして、とりあえず先生に聞いてみる、というのは正しい判断です。先生は、そのためにもいるのですから。そうすれば、何らかのヒントはいただけると思います。そこからまた自分でがんばるということです。

やたらと込み入った話で、専門としている人に聞きたい、ということがあるかもしれません。そのような時は、別の大学の先生などに聞いてみることになるでしょう。面識があれば、まだましですが、知らないことのほうが多いでしょう。大学院生はいろいろな研究会に出ていたりして、いろいろな研究者を知っています。とりあえず院生に聞いてみましょう。そうすれば何らかのアクセス方法を教えてくれるかもしれません。もしかしたら院生自身が聞きたいことに関して知識を持っているかもしれません。これは湯川先生でも同じです。とにかく礼を尽くして、伺いを立てることです。

あるいはWebで検索すれば、専門家が自分のWebサイトを持っていて、メールアドレスを公開しているかもしれません。質問が歓迎されるかどうかはその人次第ですが、電子メールで質問するという手段もないわけではありません。しかし、軽く調べてわかるようなことを質問してはいけません。電子メールを出すということだけで、たとえわずかでも相手の時間を自分に割かせているということは自覚しておくべきです。もし質問に答えてくれても、それはボランティアなのです。

またインターネット上には、ニュースグループというオープンなメーリングリストのような存在もあります。日本語のものではたいしたものはありませんが、英語では著名な研究者も投稿しているようなニュースグループもあります。そのようなグループに参加して質問を投げてみるのも手です。この場合に注意すべき事は、過去ログをきちんと読んで似たような質問がなかったかも調べておくこと、そして、質問するだけして消滅してはいけないということです。ニュースグループの原則はGive&Takeです。自分も何らかのかたちで、他の参加者に利益を還元するようにしなければなりません。詳細は書きません。自分で調べてください。Googleで「newsgroup “islamic history”」などとすれば、いくつか出てくることでしょう。ただくれぐれも護教論を展開するためのグループか、研究が目的のグループかは注意するようにしてください。

第三章 文献への言及――文献リストを作る

関連して文献があるのか? 何を根拠にそんなことを言っているのか? それを見る人にもわかってもらうための共通ルールがあります。逆に言えば、そのルールに従っていれば、ある資料を特定することができます。本章では資料を特定するための書き方、ルールを説明します。なお、ここで述べるのは歴史学での一般的な方法であって、社会学や法学、政治学ではまた別のやり方もあることは覚えておいてください。また一般的によくお目にかかるレヴェルでの書き方しか解説していません。特殊な場合は参考文献を参照してください。

和書の場合

いちいち節を立ててしまいましたが、何のことはありません。きわめて単純なルールです。書物の奥付を見れば、必要な情報はそろうはずです。

基本

次のパターンが基本です。気をつける点は二重鍵括弧『』を使うということと、「著」は必要ないということです。慣れればなんてことはありません。出版年は大幅な改版が施されていない限り、初版年で構いません。

著者書名出版社,出版年.

これが実際の論文の註では、参照したページを次のように加えます。

著者書名出版社,出版年,p.xxx.

著者書名出版社,出版年,xxx頁.

一般的には前者ですが、縦書きの場合に後者が使われることがあります。

複数のページにまたがる場合は次のように書きます。

著者書名出版社,出版年,pp.xxx-yyy.

著者書名出版社,出版年,xxxyyy頁.

それから著者が複数いる場合もあります。普通はそれを全て挙げます。もし煩雑になりすぎるようなら五人以上の場合について、代表ひとりを挙げて「ほか」などとすることができます。

著者1著者2著者3書名出版社,出版年.

著者1ほか『書名出版社,出版年.

応用

応用と言ってもたいしたことはありませんが。

副題

副題は普通ダッシュでつなぎます。ただし副題は必ずしも示す必要はありません。

著者書名――副題出版社,出版年.

編者がいる本

編者書名出版社,出版年

この場合は、著者が複数(多数)いることは前提ですので著者はいれる必要はありません。また編者が複数いる場合は、著者が複数いる場合に準じます。

編者1編者2編者3編『書名出版社,出版年.

編者1ほか編『書名出版社,出版年.

訳書

著者訳者訳)『書名出版社,出版年.

この際、著者の名前がW式(姓があと)の場合、姓をさきに記し、コンマを打って名をあとにします。ミドルネームはファーストネームに続けて書きます。ファースト、ミドルはイニシャルで略して構いません。

ターナーブライアン.S.(香西純一,筑紫建彦,樋口辰雄訳)『ウェーバーとイスラーム第三書館1994.

ローゼンタール,E.I.(福島保夫訳)『中世イスラムの政治思想みすず書房1971.

聖典などの場合は見解が分かれます(著者の場所にムハンマドと書くわけにも行かず、アッラーとも書くわけにもいかず)が、概ね次のような形が一般的なようです。

井筒俊彦訳『コーラン)』,岩波書店岩波文庫),1978.

シリーズ物・巻数

著者書名』(シリーズ名と巻数出版社,出版年.

たとえば次のようになります。

山内昌之近代イスラームの挑戦』(世界の歴史20中央公論社,1998.

なお、文庫や新書、双書、叢書をシリーズと考え、上記の規則に従う場合もありますが、一般的には出版社のあとにカッコをつけて示すことが多いようです。

桜井啓子現代イラン――神の国の変貌』(岩波新書新赤版742岩波書店,2001.

桜井啓子現代イラン――神の国の変貌岩波書店岩波新書),2001.

また数巻に渡る書物の場合は、次のように表記します。

著者書名x,出版社,出版年.

そのうち一冊を特に示す場合は、書名に巻数を入れてしまって構いません。

ブハーリー牧野信也訳)『ハディース全6巻,中央公論新社中公文庫),2000-2002.

ブハーリー牧野信也訳)『ハディース 3中央公論新社中公文庫),2001.

洋書の場合

基本

洋書の場合は、和書とはかなりおもむきが違います。注意点は、書名は二重鍵ではなくイタリックで示すことと、出版社ではなく出版地で構わないことです。著者のファミリーネームが最初に来るのは和書と同じです。

Author’s name, Title of the Book, Place, Year.

Author’s name, Title of the Book, Place(Publisher), Year.

Author’s name, Title of the Book, Publisher, Year.

具体例を挙げると次のようになります。

Gibb, H.A.R.,Studies on the Civilization of Islam,London,1962.

なお、書名は、手書き場合や、イタリックが使えない場合は、アンダーライン(下線)で代用できます。

Gibb, H.A.R.,Studies on the Civilization of Islam,London,1962.

応用

副題

副題は普通コロンでつなぎます。ただし必ずしも副題を示す必要はありません。

Author’s name, Title of the Book: Subtitle of the Book, Place, Year.

編者

編者がいる場合には、(ed.)を加えます。カッコは記載しない場合もあります。編者複数の場合は(eds.)になり、また編者多数の場合は一人を挙げてet al.(eds.)とします。

Editor’s name (ed.), Title of the Book, Place, Year.

Editor’s name 1, and Editor’s name2(eds.), Title of the Book, Place, Year.

Editor’s name 1, et al.(eds.), Title of the Book, Place, Year.

シリーズ物・巻数

巻数や全巻数を示す必要がある場合は次のようにします。

Editor’s name (ed.), Title of the Book, X vols.,Place, Year.

Editor’s name (ed.), Title of the Book, Vol.X, Place, Year.

各巻に書名がついている場合は、巻数が間に入ります。

Editor’s name (ed.), Title of the Series, Vol.X., Title of the Book, Year.

叢書名を示す必要があるときは、末尾にカッコを付して示します。

Editor’s name (ed.), Title of the Book, Place, Year, (title of the Series).

和文論文の場合

単行本所収の論文

単行本所収の場合は、和書のパターンの前に論文著者と論文題目が挿入されます。従って基本的には以下のようになります。

論文著者論文題目編者編『書名出版社,出版年.

単行本部分は、和書の場合に従って応用を利かせてください。

雑誌所収の論文

雑誌の場合、以下のようになります。出版社のかわりに巻号が入ります。

論文著者論文題目雑誌名巻号,出版年.

巻号はどっかに書いてありますから見つけてください。巻と号はハイフンでつなぐ場合と、x巻y号と表記する場合があります。

黒木英充都市騒乱に見る社会関係:アレッポ、1819-20年日本中東学会年報3-1,1988.

黒木英充都市騒乱に見る社会関係:アレッポ、1819-20年日本中東学会年報31号,1988.

また大学紀要の場合、タイトルが重なることがあります(たとえば『法学研究』とか)。そのような場合は、紀要のタイトルのあとにカッコをつけて発行大学を示します。

久保文明アメリカの環境保護政策決定過程における専門能力・運動・制度-公害未然防止法の場合-法学研究』(慶應義塾大学68-2,1995.

欧文論文の場合

単行本所収の論文

和文論文とパターンは同様です。つまり洋書のパターンの前に論文著者と論文題目が挿入されます。

Author’s name of the Article, "Title of the Article", Editor’s name (ed.), Title of the Book, Place, Year.

雑誌所収の論文

これまた和文論文の場合と同様です。論題はダブルクォーテーションでくくります。

Author’s name of the Article, "Title of the Article", Title of the Journal, Volume number-Issue’s number, Year.

なお有名どころの雑誌は頭字語として書かれることがあります。下の例のIJMESとはInternational Journal of Middle Eastern Studiesの略です。

Gray, B.H.S., "Slavely of Early Ottoman Empire 1388-1412", IJMES, 144-6, 1998.

新聞、辞典など

この辺になるとかなり人によって差が出てくるところですが、ある程度一般的と思われる方法を示します。

新聞

新聞の場合は、新聞名を書名に見立てます。題名のあとの発行地は省略しても構いませんが、TimesTribuneなどの場合は、あちらこちらの都市に別の新聞があったりするので、入れておいたほうが親切です。

新聞名』(発行地発行年.

Title of the Newspaper(Place), Year.

実際には次のようになります。

慶應塾生新聞』(東京1969-.

International Herald Tribune(Paris), 1887-.

新聞記事

ある記事について言及する際は次のようになります。版、面は必ずしも添えなければいけないわけではありません。しかし、たとえば朝日新聞の東京第7版と東京第13版でかなり内容が違うことがあります。また、アメリカの新聞の日曜版のように驚異的な厚さを誇る新聞もあります。したがって、版や面はわかれば添えておくのが親切です。なお、一般的な雑誌もこの形式で構いません。

新聞名』(発行地発行日付,,.

Title of the Newspaper(Place), Date, Issue’s number, Page.

著者名などが分かる場合は、雑誌論文に準じます。

著者記事題目新聞名』(発行地発行日付,,.

Author’s name of the Article, "Title of the Article", Title of the Newspaper(Place), Date,Issue’s number, Page.

辞典、事典

辞典全体について言及する場合は、一般の書籍と異なりません。辞典の記事について言及する場合は、まず項目執筆者がわかる場合には、項目名を論題に見立てて、単行本に収められた論文と同じような扱いをします。

Tyan, E., "‘adl", Gibb, H.A.R. et al., (ed.), The Encyclopædia of Islam, Vol.3, new ed.,Leiden, 1960.

アラビア文字は転写する

私たちの扱う地域では、アラビア文字が使われていることが多いでしょう(アラビア語、ペルシア語、オスマン=トルコ語、ウルドゥー語など)。中国語やキリル文字、ハングルなどは転写しなくていいのですが、なぜかアラビア文字は転写することになっています。転写を間違えると、まったく違う人や言葉になる可能性があるので注意しましょう。また、独自の転写法を発明すると、参照する人が混乱します。なんらかの標準に従うべきでしょう。日本での転写法で標準的なのは、アメリカ議会図書館の方式ALA-LC:1997準拠です。『新イスラム事典』の巻頭などに方法が載っています。詳しくは、「アラビア文字、作法とWeb」中の「Appendix 1 アラビア文字のラテン転写文字と転写文字のコード一覧表」を参照してください。

文献リストをつくる

実は、ここまで述べてきたことは、脚注や文末中、あるいは文中での文献への言及の仕方の一般的方法です。文献リストをまとめてつくる場合は、上記とは若干異なったリストアップの仕方をします。具体的には、出版年のみを抜き出して、著者の次に入れます。また、きちんと行揃えができるようなら、コンマを省略して構いません。

著者 出版年 『書名』, 出版社.

ある著者に同一出版年の著書がある場合は、なんらかの方法で配列し、年号のあとに[a-z]の記号を付して示します。

加藤博 1993a 「イスラム政治における公正と秩序――中心なき政治原理」『一橋論叢114-4.

加藤博 1993b 『文明としてのイスラム――多元社会叙述の試み東京大学出版会.

このようなリストを作ってある場合は、本文中での文献に関する説明は、ここまで説明してきたような方法をとることなく、[加藤 1993a pp.100-113]のような形で示すことが出来ます。

より詳しいことは

たとえば、桜井雅夫『レポート・論文の書き方 上級』慶應義塾大学出版会,1999などが非常に詳細です。ただし法学系をターゲットとしているため、やや方法が違うということも付記しておきます。

第四章 関連文献を手に入れ、読む

読みたい文献が見つかったら、探してみましょう。一般的な書籍ならば、まず間違いなく本塾図書館で所蔵しているでしょう。しかしながら、雑誌論文になったり、史料となったりするとかなりおぼつかなくなってきます。それを手に入れるための方法を以下で説明します。なお、三田メディアセンターの用意してくれている「図書の探し方フローチャート(pdf)」は一部を除き非常によくできています。ますは、これをチェックです。

探す前に

文献を探す前に、探すために必要なことを確認しておきます。著者、題目、書籍(雑誌)名、出版年などの基本的な書誌情報は、必ず押さえておいてください。

さらに、実際の所蔵確認などで非常に有用なのが、ISBNISSNなどのコードです。これらのコードは、各書籍、各雑誌について全世界で一意のものが用いられます。はやい話が著者名がわからなくてもISBNさえ分かれば、書籍を特定できるということです。NDL-OPACやMagazine-Plusなどで調べれば論文が掲載された雑誌名とともに、その雑誌のISSNコードも表示されます。これを控えておいてください。ISBNやISSNがわかると、検索が非常に楽になりますし、ILL(図書館相互貸借)などの際にも、連絡が非常に速くなります。

うちにあるか?あれば幸せ

一般的な和書・洋書であれば、まず当たるべきは、KOSMOS-OPACです。それで出てくれば何の問題もありません。ISSNやISBNが分かるなら、「キーワード検索」でISSNやISBNを指定して検索してください。一発で結果が表示されます。もし返却期限をすぎているのに貸出中なら、「オンラインリクエスト」から予約しておきましょう。延滞者に連絡がいきます。なお、雑誌の場合は巻号に注意してください。必ずしも第一巻から所蔵しているわけではありませんし、途中で欠本がある場合もあります。

問題は「在架」なのに、目指す書籍がない場合です。とりあえず周囲を見回してみます。どこかに挟まっているかもしれません。なかったら、書棚の奥を見てみます。押し出されてひっくり返っているかもしれません。それでもなければ、誰かが閲覧席で見ているか、変な場所につっこんでしまったかです。一日おきましょう。さらになければメインカウンターに申し出ます。探してくれるでしょう。欠本でなければ、おおむね二日以内にみつかりますが、見つからない場合は、次の特別整理まで待つことになるかもしれません。

さてKOSMOS-OPACで出てこなかった場合です。KOSMOS-OPACで出てこなくても本塾図書館で持っている可能性はあります。本塾図書館で所蔵していたとしても、必ずしもOPACに記載されているわけではないからです。1961年以前に受入の図書、アラビア語図書、漢籍などはOPACには登録されていません(詳しくは「資料別収録状況」を参照してください)。

OPACに登録されていないものについては、別の検索システムを使用するものと、カードで検索しなければならいないものがあります。1961年以前受入の和漢書、洋書とアラビア語図書などは、オンラインで検索できます。1961年以前の和漢書は「旧分類和漢書検索」を、洋書は「旧分類洋書検索」を使用します。アラビア語図書の場合は「中国・朝鮮・アラビア・ロシア語資料検索」を使用します。ただし注意すべきは、この索引はアラビア語図書のみだということです。アラビア文字で記述されていても、ペルシア語やウルドゥー語の書籍は登録されていません。

オンラインで検索できないペルシア語などの書物は「冊子体蔵書目録」を調べてください。図書館に入ってすぐ、2階への階段の下にあります。アルファベット順に、以前使われていたカードのコピーが記載されています。ただし、この目録で調べることができるのは、三田および白楽所蔵の資料だけであることに注意してください。なお、著者名などの読みは、ALC方式で、ペルシア語は前近代音で記載されています。

塾内所蔵が確認できたら、図書館メインカウンターのILLカウンターに行って、申込書に記入します。2日くらいで塾内便にのって三田に到着し、到着票が張り出されます。ILLは試験前後は使えないので注意してください。

なおOPACは2002年夏に文字コードがUTF-8Nに変更されました(内部コードまでUnicodeかはしりませんが)。したがって、現在冊子体目録に収められている書籍や、別データベースになっているものも、入力がすみ次第、i18nされたOPACに統合されるものと思われます。

ない? じゃ、どこにあるんだべ?

慶應内で見つからないと、事態は若干面倒になります。まずは早稲田大学のWINEを調べてください。WINEの仕様はKOSMOS-OPACとほとんど同じなので、使い方を読みながら使えば問題ないでしょう。早稲田にあれば、かなりマシな方です。

WINEで見つからないときは、すでに説明してあるNACSIS-Webcatを用いて検索します。国内の多くの大学(早稲田は含まれません!)、および大英図書館やオックスブリッジなど一部の海外の図書館での所在が確認されます。

所在が確認できたら、自分がいくか、コピーを送ってもらうか、本そのものを送ってもらうかを考えます。その辺は次節以降を参照してください。

もし、NACSIS-Webcatでも見つからないとなると、かなりレアな資料だということになります。欧文資料ならまずLibrary of Congressが持っているでしょう。和文のものなら、国立国会図書館のNDL-OPACを使ってください。イスラーム関連であれば、東洋文庫が持っているかもしれません。アラビア語やペルシア語の文献であれば、東大東文研/東京外大/東洋文庫の蔵書を横断的に検索できる「アラビア文字図書オンライン検索」システムを利用します。また、同時にアラビア語やペルシア語資料の所在目録などもありますから、そちらも調べてみます。

それでもだめなら、図書館のレファレンスに行って、なだめたり、すかしたり、ごり押ししたり、泣き落としたりしながら、調べてもらいます(相手も慣れているので、その辺は経験が必要です)。場合によっては国外まで電話をして所蔵確認をしてくれることがあります。

それでも所蔵確認ができないことがあります。相手の図書館がいいかげんな所蔵確認しかしないときなどがそれです。なんとなく、ここならある、という確信があるときは、まず慶應になくて相手先なら絶対にあるという適当な資料を見つけます。そして、それを口実に後述の紹介状を作ってもらって、直接相手先に出向き調べましょう。相手の図書館に入ってしまえば、こっちのもんです。

コピーや本を送ってもらう

所蔵確認ができたら、いよいよ文献を手に入れる段階です。これには、現物を送ってもらう方法と、コピーを送ってもらう方法があります。まず、コピーを送ってもらう方法について説明します。

コピーを送ってもらう

ある論文が、雑誌などの何頁から何頁まであるか分かっている場合などは、コピーを送ってもらうとよいでしょう。現物を送ってもらっても、目指す論文以外に用はないですし、自分でコピーするのが面倒くさいからです。

コピーをお願いする論文の書誌情報、すなわち掲載雑誌の誌名、ISSN、巻号、および論文著者、論文題目、掲載ページ数などを用意して、レファレンスカウンターに出向いてください。コピー代金は、国内の図書館の場合、おおむね一枚30円程度、これに送料がプラスされます。高いと見るか安いと見るかはあなた次第です。ただし早稲田の場合は特例で、コピーは一枚10円、送料は無料となります。慶應になくて早稲田にある場合は、コピーを自分でしなくてすむ上、料金は変わりませんから実質的にお得です。国内の大学であれば、概ね一週間以内には資料が届きます。

所蔵が海外の場合は、やっかいになります。NACSIS-Webcatでは、英国図書館などが検索されます。また自分でLCでの所蔵を確認する場合もあるでしょう。その上でレファレンスカウンターに出向くわけですが、基本的に英国図書館からのコピーを勧められることになります。私はよく覚えていませんが、英国図書館のコピーはあまり評判がよくなく、料金は高く時間がかかり、かつ劣悪という評判です。可能な限りLCを利用するほうがよいようです。海外の場合は、送料や為替などで料金がかかります。ちょっとした論文でも1000円はみるべきです。LCなら、はやければ約1週間で届きます。

本を送ってもらう

では、現物を送ってもらわなければならない場合とは、どのような場合でしょうか。

まず、本一冊丸々参照したいときです。著作権法により、本一冊全体の半分以上のコピーは禁じられています。したがって、本一冊全体を参照したいときは、現物が必要となります。

次に、ある本のどこに目指すことが書かれているのかわからない場合です。この場合も送ってもらうしかないでしょう。

レファレンスカウンターで申し込みするのは、コピーの場合と同様で、送料がかかるのも同様です。注意すべきは、現物を送ってもらっても基本的に館内閲覧のみで貸出はできない、ということです。ちょっと不便ですが致し方のないことでしょう。

紹介状を持って赴く

所蔵館に自分から出向く、という方法もあります。このような手段をとるのは、必要な文献をいますぐに欲しいとき、あるいは、まとめて見たい本を慶應が全く持っておらず、先方の図書館にたくさんあるときなどです。セルフコピーのほうが安いから自分でいく、という考え方もありえますが、多くの場合、交通費のほうが高くつくと思います。

所属外の図書館に入るには、基本的に所属している機関の紹介状が一回ごとに必要となります。私たちの場合は、慶應義塾図書館発行の紹介状によって、身分を明らかにしなければなりません。レファレンスカウンターにいって、紹介状を書いてもらいます。この時、どのような資料が必要なのか、その資料を本塾が所蔵していないか、などの確認がされます。なお、東洋文庫は研究員ないしは専攻研究者の紹介状が必要です。湯川先生にお願いしましょう。

出向くには結構お金がかかりますので、所蔵情報をきちんと確認しましょう。東大の本郷にいったら、実は駒場が持っていた、などという事態は避けなければなりません。

本書の価値は――書評を知る

論文には、「書評論文」というジャンルがあります。これはある書物について、その位置づけ、意義などを論文にしたものです。専門家が執筆するきちんとした論文ですから、手にした書物に書評論文があるなら、とりあえず読んでみるのがよいでしょう。

たまたま手に取った本だったけれど、それを参考文献リストに載せただけで馬鹿にされる、というような本もないわけではないのです。そのようなものをわざわざ評する人はあまりいないでしょうが、私たちが読んでいるときに、あまりに淡々と書いてあるので見過ごしてしまったけれど、専門家が読めば重大な新解釈だったりするようなことがあるかもしれないわけです。書評論文はそのことを教えてくれます。

書評論文は結構よく出ますので、Magazine-Plusなどで「書評」という語もキーワードとして検索してみるとよいでしょう。日本の新聞の書評などは、感想文に毛の生えたようなもので、本を読んだ後に読んでもあまり意味のないものが多いですが、欧文の新聞の場合は、役に立つ書評などがよく出ます。書評の見つけ方を自分で勉強してみてください。

またWeb上にも日本中東学会(イスラーム地域研究第5班にあったやつが復活)の「文献短評」(新刊書の書評など。院生や研究者が書いてます)や京都大学大学院アジア・アフリカ研究科東南アジア専攻連環地域論講座の「サイバー図書室」などがあります。こんなにまとまって読めて、かつ信頼の置けるものはないので、ぜひ参照してください。

Appendix.1 日本十進分類法 イスラーム関連項目一覧

第二章で説明した日本十進分類法でのイスラーム史関連表目を一覧にしました。

Appendix.2 論集所収のイスラーム関連論文一覧(簡略版)

第一章で紹介した各論集の内容題目一覧です。題名に目を通すだけでも興味のあることがみつかるのではないでしょうか。

Appendix.3 第二章「ネタを深める」演習編

関連文献の探し方について、本稿で述べた方法を利用しての実例演習です。作成中

Appendix.4 日本語で読める原典たち

日本語で読める原典をリストアップしてみました。私の目の届く範囲ですので、遺漏があるかもしれません。情報がおありの方は私までメールをください。

Appendix.5 慶應義塾図書館の歩き方―探検のために

第一章での「図書館をうろつく」のためのフロアマップ付きのガイドです。関連書の場所を示してあります。

長場紘『現代中東情報探索ガイド』慶應義塾大学出版会,2000[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4766408357
現代の中東について知りたいことがあったら、まず本書を見て、情報検索の手法を学ぶとよいでしょう。基礎的方法を概述したあとで「パレスチナ問題の背景を知りたい」などの具体事例について、どのような本、どのようなサイトをたどってゆけばよいのかを実に詳細に記述しています。

 

河野哲也『レポート・論文の書き方 入門 改訂版』慶應義塾大学出版会,1998[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4766406982
本書は、レポート・論文の書き方の入門です。技術的事項を辞典的に説明するわけではありません。まず、本を読んで、どの点に疑問を持つか、そして、その疑問に従って、どのように議論を展開し、ブックレポートとしてまとめるかを、実例に従って述べています。有用ですので必読としたいところです。

 

桜井雅夫『レポート・論文の書き方 上級』慶應義塾大学出版会,1999[KOSMOS-OPAC]ISBN: 4766407245
論文を書く上での技術的事項について微に入り細を穿って記述されています。本書一冊があれば、ほとんどカバーできるでしょう。ただし文献記述方式や、註の付け方は法学分野に一般的なものなので、若干のアレンジが必要でしょう。

 

おわりに

ここまで「研究の入口」のことを、私の短い経験に基づいて縷々書き連ねてきました。まだまだ多くの誤謬と遺漏があるかもしれません。読まれた方は、実に細かいことまで読まされて、いやになっていることでしょう。ですが「物事を調べる」技法を自家薬籠中のものとすることができるならば、それは一生ものの価値を持つものだと私は考えています。私自身、その一生ものの技法を学びつつある者です。その中途の成果を私なりにまとめてみました。はじめに書いたように、これは「入口」に過ぎません。逆に言えば、ここまで書いてきたようなことは、一度やってしまえば、すぐに自分のものになるものです。安心してください。

この拙いリソースが、みなさんの何らかのお役に立てていれば幸いです。最後に、このリソースにコメントをくださった指導教授の湯川武慶應義塾大学商学部教授、2002年度湯川ゼミの諸君、慶應義塾図書館のフロアマップの転載、修正をご快諾くださった慶應義塾三田メディアセンター(およびその労をとってくださった閲覧係の角田さん)、日本十進分類法細目表の転載をご許可いただいた日本図書館協会に感謝の念を捧げたいと思います。ありがとうございました。

「湯川ゼミ学生のための基礎技術 ――イスラーム史研究入門基礎 Ver.1.0.1」への2件のフィードバック

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