多木浩二『戦争論』

歴史哲学の観点から1900年代の戦争を振り返る。本書で提示される重要な視点は、クラウゼヴィッツの有名な「戦争は政治におけるとは異なる手段をもってする政治の継続にほかならない」の否定である。すでにこれはナポレオン戦争のころの発想であり、近代の戦争とは政治以前に発生しており、むしろ政治こそが戦争を「幻想の目的=仮想未来」として動いてきたのではないか、という論だ。ここから推論して著者はいう。ユーゴでのNATOの空爆などでは「戦争そのものの発生する条件が未知のものを含んでいるように思える」と。

もうまもなく21世紀を迎える我々にとってはきわめて現実的に恐ろしいことである。もし、戦争が起こってしまったら私たちは「サラエヴォ・ノート」の著者たちのようにたくみな権力回避の言説をとって戦争を脱目的化する以外にないのであろうか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください