宮田律『中央アジア資源戦略――石油・天然ガスをめぐる「地経学」』

いわゆる時事物である。しかしこれまで旧ソ連中央アジアについての日本語による概説書は2~3冊程度しかなく、本書の刊行は大いに歓迎できる。内容は天然資源のパイプラインに絡む各国の思惑を軸として政治、経済を論じている。しかしながら書き方はジャーナリスティックであり参考文献は示されないのがおおいに残念に感じる。

私たちはどうしてもいっしょくたにごちゃ混ぜにしてしまうが、中央アジアの国々はそれぞれ多様である。天然ガスに豊富なトルクメニスタン、石油に豊富なカザフスタン、アゼルバイジャン、人口にものをいわせうるウズベキスタン、もっとも民主制の発達しているキルギスなど……。

ここから資源戦略への目もそれぞれ変わらざるをえない。地域大国としてのロシア、トルコ、イラン、中国の思惑、さらにアメリカ、EUの思惑。これが絡んでカスピ海を始め複雑な国際政治のファクターが浮かび上がってくる。トルクメニスタンはアフガニスタンを通じてパキスタンまでパイプラインを引きたい。一方ロシアはこれを阻止したい。そこで内戦下のタジキスタン、アフガニスタンにさらなる複雑な構図が作られる。アメリカはイランを通したくないし、EUにふられつつあるトルコはアメリカ・イスラエルへより顔を向けることになり、自国へエネルギーを引き込みたい。対してロシア=イラン=中国の同盟が結成される……。これらを優しく解き明かしてくれる。

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