橘木俊詔『日本の経済格差―所得と資産から考える』

推薦版.本書は経済統計を駆使して、私たちの目から鱗を落としてくれる。その鱗とは「日本は経済格差の少ない、総中流社会」という神話である。著者によると戦後一貫して不平等化は進行している。バブルはそれに拍車をかけ、バブル崩壊は逆に平等化をしたように見せた。が、戦後の進行を考えるとバブル期が異常であっただけで、バブル崩壊も「戦後の着々とした不平等化のペースから見て自然な場所」に戻しただけであった。いま、世間では規制緩和、直間比率見直が叫ばれている。著者から見ると、不平等化に油を注ぐだけ、ということになる。

しかし私が思うに、結果の平等ではなく、機会の平等を求めるべきであろう。その意味で私は著者の第1の提言である累進課税の強化には反対である。しかし第2の提言である相続税の強化には賛成である。なぜなら結果の平等を保証しないなら、機会の平等を徹底して保証しなければ、自己責任をとらせることはできないからである。生まれながらの高所得者を私はあるべからざるものと思う。

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