サラ・フィッシャー, レイチェル・ストール(杉原利治, 大薮千穂訳)『アーミッシュの学校』

アーミッシュはもちろんあの伝統主義の集団である.近代国民国家における国民統合の軸の一つに公教育がある.当然公教育の義務化とアーミッシュの外部社会との関わりの忌避は衝突をおこす.そのあたりのことも絡めつつ,アーミッシュ自身の教育者によって淡々と語られた書物.訳者としてはアーミッシュに持続可能な社会のありかたを見ている.しかし,この集団が第三世界の国々にいたとしたらどうか? やはりネイションビルディングを阻害する集団としてみられてしまうのではないか.現代のアーミッシュがまがりなりにもそのアイデンティティを維持し,かつ社会的にも暴力的な紛争を起こさずにすんでいるのは,合衆国にいるから,という点が大きいのではないか.その意味で現代アーミッシュの存在は近代合衆国の産物であるとさえいえるのではないか.

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