劉傑『中国人の歴史観』

よく中国外交の「わからなさ」が話題になる。曰く融通無碍にもかかわらず、「自主独立・主権尊重」の基本を貫き……云々。本書はこれらの点は決して社会主義のイデオロギーだけに帰すことのできるものではなく、また「中華思想」や「近代国民国家」のみに帰すことができるものでもなく、これらの複雑に絡み合った結果であるとする。

特に外交の点では、1世紀半にもわたる「弱い中国」の記憶が今も生きていることを忘れてはならないという。なぜなら時に用いられる「以夷制夷」政策はむしろ小国外交の基本でもあるからだ。この点が建国以来の共和国の主是であるナショナリズムに反映していると説く筆者の目は鋭い。文春新書であるからといって右側の中国おとしめ的言説ではないので注意!

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