小川克彦『デジタルな生活』

「日本の現代」シリーズ。本巻は家電や携帯電話、パソコンなどを通じて、1970年代ころからの社会の「個人化」(個人主義化ではない)が進んでゆくという視点をモチーフに現代日本の技術史・社会史を叙述する。それなりに細かい技術的解説もあるが、常に「日本の現代」というキーワードが著者の頭にはあったらしく、具体的かつわかりやすく話が進められており、IT史が陥りがちな単なる個別事例の集積や理念の列挙という失策を犯していない。この点が非常に高く評価できる。

とにかく読んでいて驚いたのは、本書の叙述の半ば以上が、ほとんど常識として私の頭に入っているということである。換言すれば、さして目新しいことがなかったということだ。普通、専門外の本なら概説書であっても目から鱗という記述がたくさんあるのだが、本書を読んでもそれがなかった。コンピュータ利用のサポートなぞをアルバイトでやっているわけだが、当人が思っている以上に深みにはまっているのかもしれないと思った。


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