永井秀夫編『近代日本と北海道――「開拓」をめぐる虚像と実像』

論集である。

中村英重「岐阜県と北海道移住」は、北海道移民の移出元について市町村レヴェルまで遡って分析した研究。県下一円平均的に移民が発生するわけではなく、移出元は集中する傾向がある。移住史が移出先のみに着目している段階から移出元の事情まで詳細に分析する段階に入ったことを示す。もとより北海道移民は世界史的にも非常に規模の大きい移民であり、研究の意義も多大である。

ほかに注目論文としてはキリスト者坂本直寛の思想を追い直した金田隆一「北海道における坂本直寛の思想と行動」と一般に忘れ去られがちな近代に導入されたロシア民具の一つである橇の変容を論じる関秀志「外来民具の導入とその改良・普及について――ロシア型橇を中心に――」などがある。

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