池内恵『現代アラブの社会思想』

『現代アラブの社会思想』は9.11後の出版。本書の概要は次のようになる。社会思想史的には、アラブの「現代」は1967年、第三次中東戦争の敗北に始まるという。ここでナセリズム、アラブ社会主義は退潮し、かわってイスラーム主義と急進左翼の勢力が強くなったと言う。しかし急進左翼は、その理想像とした中国文化大革命の真相が明らかになることをはじめ全世界大での左翼の敗退をきっかけに勢力を失った。一方のイスラーム主義も理想像を鼓吹するのみで、その行動は次々と先鋭化するにもかかわらず、現実的な対策を具体化することはできず、結局イスラエルを倒すことはできなかった。

ここに、現世での理想郷の建設をあきらめ、来世に求める終末思想が登場する。そして急進左翼の倒すべき目標アメリカ=イスラエル独占資本主義帝国主義枢軸とイスラーム主義のジハードの対象であるアメリカ=イスラエルは、陰謀をたくらむ偽救世主にまで昇華するのだ、とのこと。

著者によると、オカルト的な色合いを帯びた本もサブカルチャーではなく、立派な著作として受け取られる風土がすでにエジプトには形成されているという。これを一つの社会誌として受け入れるならば、それはエジプトであるがゆえなのか、あるいはアラブ全般なのか。そして非アラブのイスラーム世界ではどのようにこのような傾向が受け取られるのだろうか。

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