トラさんを保護せよ

今日、上野動物園に行って来た。昨日がみどりの日で入園無料なのはわかっていたが、どうにもこうにも混雑しているだろうから、それ避けて今日にした。ろくに調べもしなかったが、ズーストック計画で上野動物園にはトラさんを集めることになっていると聞いていたので、なんとなくうじゃうじゃいるトラさんを見に出かけていったわけである。「トラの森」というのがちゃんと作ってあって檻ではないので見やすかった。目の前をのそのそ歩くトラさんは、体はやせっぽちだけど手足も顔も大きくていい感じ。でも2頭しかいなかったのだ。

あれ?集めているのではなかったのかな、と思って帰ってきて調べた。それが愕然とすることばかりで非常に驚いた。なにかトラというのは野生のものもうじゃうじゃいて、あちこちの動物園でも10頭単位でいるものだと勝手に思いこんでいたのだが、それが全然違っていた。というより、絶滅寸前。8亜種あるなかで、すでに3亜種が絶滅していて、残る5亜種も野生と動物園のトラさん全部併せて10,000頭にも満たないらしいのだ。

残っている5亜種というのは

  • アムールトラ
  • ベンガルトラ
  • インドシナトラ
  • スマトラトラ
  • アモイトラ

で、それぞれ1998年5月の統計によると野生でアムールトラが400頭前後、ベンガルトラが3,000から4,500頭、インドシナトラ1,500頭前後、スマトラトラが500頭前後、アモイトラが30頭前後だそうである。動物園にいるものを加えても総計5,000頭~8,000頭で10,000頭には及ぶ統計は見つからなかった(詳しくは5 TIGERS : The Tiger Information Center‘What is the population of tigers in the wild?’を参照)。

これを知って驚くのなんの。上野で2頭みたということは、現存のスマトラトラが800頭くらいいるとしても0.25%くらいにあたるわけで。5年くらい前は8頭くらいいたから実に1%にあたるということになる。トラさんうじゃうじゃなどというのは、完璧な幻想であったのだ。これは、保護の必要性があろう。

しかしその保護もどうも日本ではごく最近まできちんとしていなかったようで、1998年には北海道美瑛の「北海道シペリアタイガーパーク」が立ち入り検査された際、報告されていたアムールトラ29頭のうち9頭しか確認できず、皮売買や栄養剤製造の目的で売却か殺されたかされてしまった疑いがもたれた。さらに管理がずさんであったので餓死の可能性もあるという。アムールトラはワシントン条約付表第一表にランクされる完全希少種であるので、このような事件は日本の恥である。立ち入り検査を何年もおこたった道庁にも責があるのは間違いない。全世界で1,000頭はいないと思われるシベリアトラが29頭もいたというのがめちゃくちゃすごいことなのに、それを9頭まで減らすと言うのはS級の犯罪に違いない。なお皮売買などについては、立件が断念され、「疑い」にとどまっている。

さて、上野で平成9年に生まれた三つ子のうちの1頭が先述した間近で見たやせっぽちのトラさんなのだが、のこりの2頭が横浜にいる。そして多摩動物園にはアムールトラがいる。それから神戸の王子動物園にはズーストック計画でベンガルトラがいっぱいいて、白い子もいるとか。そのうち行く。


王子動物園にいるのはアムールトラが雄雌一頭ずつだそうで、白いトラやベンガルトラがいるのは宝塚ファミリーランドだそうです。こちらは来年4月7日で閉園になってしまうのだそうで、彼らはどうなるのでしょう……。情報をくださったきりんさん、ありがとうございました。以上10月28日追記。

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