田中康夫『全日空は病んでいる――「ザ・ファースト・チョイス」の勘違い』

全日空は病んでいる―“ザ・ファースト・チョイス”の勘違い

著者/訳者: 田中 康夫

出版社: ダイヤモンド社(1997-06)

Amazon価格: 1

単行本(244ページ)

ISBN: 4478560196

Calil

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NHとJLを矢面に立たせて、サーヴィス論を展開している。個々のクレーム例などは「ふーん」で済ませてよいと思うし、実際苦情を受け付ける能力をNHが失ってしまっていたのも事実なのであろう。しかしこの書物でより重要なのは表題のNHではなくサーヴィス論である。

日本人の多くがキャビンでのサーヴィスを「自分が特別扱いして貰うこと」=ホステス的サーヴィスだと思っていて、航空会社もそれをサーヴィスとおもって唯々諾々と従ってしまっているのが現状の日本の空であると指摘する。飛行機を特別な乗り物と思い、そしてそう思って乗っている自分は特別と思い、奴隷のように客室乗務員を見下すフリークエント・フライヤー。その逆のコンプレックスで自分は航空会社に勤めていること、これを「ステータス」のように思いこみ、一般の乗客を「カーゴ」扱いする社員。奇妙なおもねりと傲慢さが支配するFクラスのキャビンの雰囲気が全社を支配してゆく。それがエアラインが墜ちてゆく過程だとの主張である。

お互い人間として、あるべきサーヴィスを感謝を持って受け止める乗客と、ホスピタリティ溢れたキャビンアテンダントと、その雰囲気をより育てて行くエアライン。これが理想と言えるような気がする。日本的ではないのかも知れないが、個人主義的なホテルのサーヴィス、暖かく不自然でなくスマートな、サービスをして欲しいと思う。

ナショナル・フラッグ・キャリアとして「国」を背負ってしまい、単なる運輸業の自覚を無くしたときが危ないと筆者は主張する。余裕ある二番手は美しい。アンセットがそうであり、アシアナがそうであった。そして全日空もそうだったのだ。地方から地方へと向かう航空機の乗客に一生に一度のフライトを楽しむ老夫妻が居るかも知れない。その人達の集積が航空を支えている、くらいに思った方がよいのだ。

ちょっと褒めすぎた感がある。苦言を呈すると文章にむやみに漢字を使いすぎである。カタカナがどうしても多くなる業界だけによみにくい。「仮令」なんて普通使わない。それからサーヴィス云々したところで、所詮はFやCクラスのフリークエントユーザーである。だからエピソードもそちらに傾きがち。説得力がないと言えば、ないかもしれない。

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