森詠『日本朝鮮戦争』(全15巻)

さりげなく図書館で借りては読んでいた。仮想戦記物は昔ちらちら読んだが、最近はご無沙汰。なんだかなぁ、という設定だったが、借り始めたときは、なにか軽い大長編が読みたかったので、これを選んでしまった。

北朝鮮が、韓国に侵攻して……日本で国粋政権が出来て……PKO派兵を韓半島にするという設定。当然、韓国人は「倭奴」を憎んでいる。

この書も日本人がいかに「国家」「民族」の虜となっているかを理解させてくれる。ただし一点ひかるのは、鮮宇尹という北朝鮮兵士である。彼は女真族で、自らのアイデンティティに悩む。結局それは戦死によって解決されないまま、物語は終わる。社会主義体制下での民族、あるいは「近代」の民族の無理、が読みとれる。しかし残念ながら、本書の読書でそれを考えたのはどれくらいの人たちであろうか。普通に読んでしまえば、少数民族の悲哀、で落ち着いてしまうところに怖さがある。

さて。全体を通しては、とんでもない話で、友好関係をそこなう、まで言ってしまってもいいかも知れない。ましてや下卑であるし、兵器の説明が長すぎる。参考文献もどうにも怪しい物ばかりでまともな研究書はあまり見あたらない。ルビのカナもいいかげんである。ある程度の「見方」をもたずに、このような書を読むのは、大変危険な事と感じた。

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