根津由喜夫『ビザンツ―幻影の世界帝国』

本書はビザンツ史の概説ではなく、コムネノス朝のマヌエルI世コムネノス(在位1143-1180)の時代史である。その記述はコンスタンティノープルの都市社会、宮廷の貴族社会、帝国の国家戦略に及ぶ。 コムネノス朝はバシレイオス […]

宮田律『中央アジア資源戦略――石油・天然ガスをめぐる「地経学」』

いわゆる時事物である。しかしこれまで旧ソ連中央アジアについての日本語による概説書は2~3冊程度しかなく、本書の刊行は大いに歓迎できる。内容は天然資源のパイプラインに絡む各国の思惑を軸として政治、経済を論じている。しかしな […]

小林章夫『イギリス名宰相物語』

有名どころのイギリス歴代首相を取り上げ、特にその個人的資質や人間性を物語風にさらっと流してくれる。時に断片的におもしろい知識も登場する。たとえばディズレーリ。ユダヤ系だとの知識はあったものの、その姓の綴り(D&#8217 […]

伊佐山芳郎『現代たばこ戦争』

一通りたばこの毒性と嫌煙権訴訟をしるにはもってこい。ただし嫌煙原理主義的な部分もあるので、喫煙者の方は度量の広い人以外には勧めない。 依存症があるたばこというものを売るためには、いかに20代で定着させるかが勝負であり、煙 […]

高山博『中世シチリア王国』

推薦版。日本が誇る中世シチリア王国研究の第一人者高山博氏の一般向け概説書がついに江湖に評を問うことになった。シチリアはヨーロッパ、ビザンツ、イスラームの3つの文化を互いにおりまぜ、共栄させた「地中海帝国」である。なにより […]

野村實『日本海海戦の真実』

本書は1982年に発見された「極秘明治三十七年海戦史」をもとに司馬遼太郎の「坂の上の雲」に代表される日本海海戦のイメージを実証史学の立場から検証してゆくものである。主な論点は二つである。 まずバルチック艦隊を対馬海峡で的 […]

アリアドネ編『思考のためのインターネット――厳選サイト八〇〇』

本当に厳選され、役に立つサイトが収録されている。ネット上のアリアドネより詳しい解説が載っている。併せて使うと便利。ただし、前提として英語が読めることがあるのはいうまでもない。

小倉紀藏『韓国は一個の哲学である―<理>と<気>の社会システム』

韓国の政治、社会、歴史、文化をすべて理気学という朱子学の発想で読み解こうとする奇抜の書。中国が満洲族の清朝に下ると、半島では、にわかに朝鮮こそが中華なりとして、理気システムの発達が急速に進んだ。そしてそのシステムは現在ま […]

鈴木孝夫『日本人はなぜ英語ができないか』

著者は「日本語は国際語たりうるか」などで知られる論者である。日本人の英語のできない原因として、「憧れとしての外国語」を挙げる。これは明治後期には払拭されてよかったはずのものなのに、なぜか残ってしまっている。そこで「憧れ」 […]

根井雅弘『21世紀の経済学―市場主義を超えて』

この書はケインズを専門とする経済史家による、現今の市場万能主義に懐疑感を示しつつ、新古典派を無視することなくバランスよくレギュラシオン理論や複雑系にも触れた現況の経済学の総括である。特に目新しい主張はないが、頭の整理をす […]

井上史雄『敬語はこわくない――最新用例と基礎知識』

敬語の変化は、当然の言語の歴史的変遷という立場から、敬語がどのように変化してきたかを示す。いわゆる実用本でないため、おもしろい。ただの誤用事典でないし、変化する、という前提にたっているため議論には納得するところがおおい。 […]

国分良成『中華人民共和国』

中華人民共和国はさまざまな面を見せてきている。たとえば国内経済に対しては発展途上国の顔、そして外に向かっては「富強」を志向し、一部実現したと誇る国家の顔である。それを著者は「中国の世界」と「世界の中国」という二つの軸を導 […]

山内昌之『イスラームと世界史』

著者による1997年から1999年までさまざまな雑誌に掲載された歴史とイスラームを絡めたエッセイを編集した物。ジャーナリスティックなものも歴史哲学的なものもあり、読み物としてはおもしろい。特に「丸山眞男の読んだ『神皇正統 […]

広田照幸『日本人のしつけは衰退したか――「教育する家族」のゆくえ』

歴史的に検討して上では「衰退していない」というのが著者の主張である。「日本人のしつけが衰退した」という議論は、一昔前の「よい」記憶を、現在のマスコミを騒がせる「もっとも凶悪な犯罪」と比較して、昔はよかったという結論を出そ […]

見沢知廉『天皇ごっこ』

著者は新左翼にいて、のち右翼に移った人らしい。本書は、刑務所、左右セクト、精神病院、北朝鮮などの各章をたてて、日本人のこころにいかに「天皇」なるものが染みついているか、過激に主張される。「左」もまた分派を統合して大きなう […]

進藤榮一『敗戦の逆説-戦後日本はどうつくられたか』

特選版。アメリカの日本占領政策はどのように作られたのか? 通説的にはグルーらが発案した「知/親日派」の宥和的だった政策が、親中派によってよりハードなものになっていったとされている。しかし実態はこのような二項対立の単純なも […]

加賀乙彦『永遠の都』全7巻

大河小説をよみきった快さを感じる。舞台は、本書の「永遠の都」は東京。昭和11年から昭和23年までの時代を三田に病院を構える時田利平の一族の眼を通じて描く。上昇志向・立志の人利平の一家、アッパーミドルのサラリーマン小暮悠次 […]

大津留厚『ハプスブルクの実験』

推薦版.神聖ローマ帝国の解体を経て、普墺戦争終了後に歴史上珍しい「オーストリア=ハンガリー二重帝国」という国家が形成された。アウスグライヒという協定によってむすばれ一人のハプスブルク君主、二つの政府、一つの軍、一つの大蔵 […]

藤本ひとみ『侯爵サド』

精神病院に監禁された老いたサド侯。そこで一つの審問が持ち上がる。すなわち侯を治癒可能な精神病者とするか、不可能な犯罪人として収監するか。理事長は前者の立場に立ってトラウマによる患者であると説明しようとし、院長は後者の立場 […]

上村幸治『中国路地裏物語――市場経済の光と影』

北京の裏町にはいまも昔ながらの造りの家が広がっている。そこへ行けばさまざまな声を聞くことが出来る。豊かになりつつも殺伐としてきた空気、「先富起来」から「共に豊かに」とスローガンは変わった。中国政府のスローガンはその反対方 […]