永久保陽子『やおい小説論―女性のためのエロス表現』

博士(文学・専修大学)学位請求論文。 やおい小説研究にまがりなりにも入りかけた人間として、やおい小説研究はついに博士号が出るまでになったかという感慨をいだかざるをえない。しかも本書は、これまで多々出版されてきた読者と作者 […]

ガブリエル・マンデル・ハーン(矢島文夫監修, 緑慎也訳)『図説 アラビア文字事典』

これまでアラビア文字の本というとカリグラフィーの作品紹介が多かったが,これはその基礎となる各文字ごとの書法を一般読者にもわかりやすく紹介している本.さらにアラビア文字とはいかなる意味を持つかもイントロダクションで示されて […]

松田之利, 筧敏生, 上村恵宏, 谷口和人, 所史隆, 黒田隆志『岐阜県の歴史』

いたってオーソドックスだが,比較的飛騨が詳しいほか,岐阜県域で発生したことを基礎に歴史事象を取捨している点,「飛山濃水」(飛騨の杣と輪中の暮らしなど)という対比を常に生かしつつ通俗的なイメージの修正(飛騨の匠)をきちんと […]

『プロとして恥ずかしくないデザインの大原則』

悪くない.かなりコンパクトにまとまっている.MdNの普段の細かい特集がきちんと集大成された感じ.一冊もっておいて損はない.ただし54ページの図五と図六が入れ替わっているのは,このような本としてはかなりこっぱずかしいのでは […]

藤田達生編『伊勢国司北畠氏の研究』

戦国三国司家のひとつ北畠氏について. やや考古学方面の論文が多いが,北畠氏の市庭である多気のあり方については教えられるところが多い.近年進展の目覚しい中世後期の都市研究の成果がようやく伊勢南部にまで及んでいる.政治的中心 […]

足立紀尚『牛丼を変えたコメ―北海道「きらら397」の挑戦』

きらら397の話。ただ題名にやや偽りがあって牛丼ときららの話は序章のみ。あとは稲の交配と北海道できちんと育ち売れる食味、耐冷性に優れた米がどのようにしてつくれたかが主題。そのあたりは北海道史や農業史をそこそこ知っていれば […]

鈴木真哉『戦国鉄砲・傭兵隊―天下人に逆らった紀州雑賀衆』

戦国期の雑賀衆を論じたまっとうな本。史料もきちんと使っており、ビブリオグラフィも整備されている。いっそ注がついていないのがもったいないと思うくらい。残念なことに新書の悪い癖で題名が適切でない。 著者の言うとおり雑賀衆を扱 […]

古川貞雄, 井原今朝男, 小平千文, 福島正樹, 青木歳幸『長野県の歴史』

室町期がよく書けている.あまりに些末でごちゃごちゃとしている時代だが,中世から近世への転換期の萌芽といわれる15世紀半ばを無視するかどうかで地方史概説の価値は決定的に変化する. 本書はただでさえ複雑なこの時期を信濃という […]

須藤眞志『真珠湾<奇襲>論争― 陰謀説・通告遅延・開戦外交』

やたらと繰り返される真珠湾がローズヴェルトの陰謀によるという陰謀史観をただす書。すでに陰謀説はほぼ退けられてはいるが入門書など書店の棚を賑わすのは陰謀史観本ばかりだった。本書のように平易で説得的な書物の登場によって陰謀史 […]

田村由美『BASARA』(全27巻)

実はBASARAはこれまで何回かアタックしていたのだが絵柄と登場人物の名前がどうにもなじめず1巻を最後まで読むことが出来ないでいた.今回はスッとはいることができた.話としては「天は赤い河のほとり」にやや近い.ただし完成度 […]

ジャック・ル=リデー(田口晃, 板橋拓己訳)『中欧論―帝国からEUへ』

「中欧」をめぐる言説史.文学や論説から思想変遷を追うので実際の政策はあまり関係ない.やや高踏的な印象を受けた.クセジュらしいといえばクセジュらしい.

黒羽清隆『太平洋戦争の歴史』

原著はもう20年近く前になるが,改めて読むと非常に良い本である.新史料の発掘で揺れ動く細部にはあまり立ち入らず,確定した事実を歴史として描き出す堅実な手法をとる.文がすばらしい.戦争まわりの書物はどうにもイデオロギー性の […]

友清理士『イギリス革命史(上)―オランダ戦争とオレンジ公ウイリアム』

詳細な事件史をナラティヴに.といったコンセプト.『ローマ人の物語』に近い性格で,専門家ではない方が書かれているので,最近の研究動向的には問題がありそうな気もする.

深井甚三『越中・能登と北陸街道』

表題の越中・能登の全域と高山盆地以北の飛騨を扱う.本巻では東西の道である北陸街道だけでなく南北の道および水運についてもバランスよく記述されている.本シリーズでは従来ひとまとめにされなかった地域をまとめて扱うことがあるが本 […]

鄭大均『在日・強制連行の神話』

現在の在日コリアンは日本の強制連行の被害者である,といういつの間にかひろまった言説の虚構性・政治性を指摘する本.文春なので右よりのヒステリックな叫びかと思ったのだが,語り口も堅実冷静で良心的な学究の書物であった.もとより […]

ロバート・ベア(柴田裕之訳)『裏切りの同盟―アメリカとサウジアラビアの危険な友好関係』

CIAの工作管理官だったという人のサウジアラビア=アメリカ同盟の危うさを描く本.もとよりサウジアラビア王族の腐敗とかサウジアラビアの人口増加による社会安定性の低下は中東研究者にとって常識である.本書は石油と武器をめぐるア […]

青弓社編集部編『従軍のポリティクス』

青弓社らしい本.どこからどこまでカギ括弧の多いやや「現代思想」系の本.特に冒頭の加藤哲郎論文はいったい何を言いたいのかわからない.しかし読み進むにつれておもしろい論考が増える.従軍牧師(これは連隊に1人配属される宗教者の […]